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2017.08.28 エグゼクティブ / マネジメント

VOL.87 ドラッカーが観た、「日本的経営の源流」。(後編)

ドラッカーは、『マネジメント』執筆当時の従業員満足度に関する欧米の調査の結果から、従業員の不満に二つの種類があること~否定的不満と肯定的不満~が存在し常に問題となっていることを挙げている。

「不首尾、無原則、低賃金、労働環境への不満すなわち否定的不満と、仕事の方法、仕事への欲求、マネジメントへの要求など肯定的な不満である。日本の継続学習はこの肯定的不満を成果に結びつける」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

この(当時の)日本の継続学習を従業員が希求する土台としてドラッカーが挙げるのが、いわゆる「日本的雇用制度」、終身雇用・年功序列制度だ。

「日本のシステムでは、人員整理や解雇への恐怖は最小限に抑えられている。X理論のアメもムチも必要ない。45歳以上のごく限られた人たちを除き、報酬は勤務年数の関数である。中卒の肉体労働、高卒のじ事務労働、大卒の知識労働のそれぞれに15歳、18歳、22歳の初任給が定められる。報酬と肩書は勤務年数によって決められる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ある面、いま見ると隔世の感もあるが、90年代初頭までの高度経済成長期からバブル期までの日本企業の雇用はこのシステムで成り立っていたのだ。好むか好まざるかはともかくも。

このシステムが第二次世界大戦の焼け野原からたった10数年~20年ほどで世界第二位の経済大国へと日本を引き上げたのは事実だが、この硬直的な制度が強力なリーダーを育てたとは、世界から見ても、現在の我々日本人が見ても、到底信じがたいだろう。
ドラッカーはこの「秘密」について、雇用の安定こそが長期継続的な従業員教育を可能としたことを強調する。

「日本では、ほとんど解雇されないため、また最初の25年はもっぱら年功序列によって昇進するため、若い者の面倒を見、育てることが、マネジメントの第一の責任とされている。日本の組織に共通する弱点は、欧米のそれよりも派閥が生まれやすいことである。だが日本では、若い知識労働者が孤児になることはない。放っておかれることはない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

雇用が固定されていることで、従業員は相談相手や願望、期待のぶつけ先を持つことができる。組織や仕組みに明るいベテランが存在し、その先輩は後輩に目を掛けてくれるのだ。
この辺りは、人材流動化が激しく進んだ現在の日本の企業環境にいる我々経営者も、その一方で考えるべき、ケアすべきポイントではないだろうか。
実際、最近改めて、メンター社員制度や、社員コミュニケーションを密にするための「コンパ制度」、大手企業の「独身寮」導入などが見直され復活しているのも、このことに気づいているからだろう。

「日本の組織ではあらゆる階層において、意思決定の責任を分担することが期待されている。すなわち組織全体の観点から考えることが期待されている。意思決定のプロセスそのものへの参加ではない。意思決定を考えることへの参加である。権限による参加ではない。責任による参加である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

小杉俊哉氏と「リーダーシップ3.0」を明らかにしたことがある。その中で、当時の日本は「リーダーシップ1.5」であったという結論に至った。
※参考
https://www.keieisha.jp/features/leadership/vol-2 http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1302/07/news014.html
当時の問題はもちろんあって、完成形とはいいがたいという判断を我々はしているが、一方で捨て去ってしまうには良い、日本的経営の良さ・強さがあったのものまた事実。

少なくとも我々経営者は、なにが日本人的強さ(現場の主体的関与、継続学習力)をもたらしてきたのかについて、自覚的でありたい。


※「リーダーシップ3.0®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です(登録番号:第5435135号)

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