2018.01.22
エグゼクティブ / マネジメント
VOL.106 マネジメントの資源は人である。だから…。
「マネジメントは、人という特殊な資源とともに仕事をする。人はともに働く者に特別の資質を要求する。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
人と働くということは、人の成長にかかわりを持つということだ。そうドラッカーは述べる。
つまりは、いかに共に働くかということが、メンバーの成長を助けるか妨げるかを決め、同時にマネジメントにある者自体の成長可否を決定づける。
「部下を正しい方向へ導き、より大きく、より豊かな人間にすることが、直接的に、自らがより豊かな人間となるかより貧しい人間となるか、成長するか退化するかを決める。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
人をマネジメントすることに関連する能力やスキルは学ぶことができる。管理体制、昇進昇格制度や報奨制度を通じて人材開発を行うことも可能だ。
「だが、それだけでは十分でない。スキルの向上や仕事の理解では補うことのできない根本的な資質が必要である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
さて、それは何か?
最近、管理者や人事の悩みによく上がるのが、「厳しく言ったりすると、すぐに辞めてしまう」という社員の傾向についてだが、ドラッカーは『マネジメント』で、「最近は、愛想をよくすること、人を助けること、人づきあいをよくすることが、マネジメントの資質やスタンスで重視されるが、そのようなことで十分なはずがない」と指摘している。
うまくいっている組織に存在するタイプとして、ドラッカーが挙げているのが、「気難しいくせにしばしば人を育てる」リーダーだ。
彼は、一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。自ら知的な能力をもちながら、真摯さよりも知的な能力を評価したりしない。
「逆に、このような資質を欠く者は、いかに愛想よく、助けになり、人付き合いがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジメントとしても紳士としても失格である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
ドラッカーのメッセージのコアのひとつが、ここで述べられる。
それは、マネジメントは学ぶことができるが、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身に着けていなければならない、一つだけ存在する資質についてだ。
「才能ではない。真摯さである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
マネジメントの資源は人である。だからマネジメントに関する能力、スキルを体得することと同時に、自らの真摯さを問わねばならない。
改めて噛みしめたい指摘だ。