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特集記事・コラム

2017.11.13 エグゼクティブ / マネジメント

VOL.98 できないことをするな~「社会的責任」の限界。

これまで数回、企業が社会に与えるインパクトを、企業はどのように処理するべきなのかについてのドラッカーの考えを見てきた。

では企業はどこまでその社会的責任を負っていけばよいのだろうか?ドラッカーは次のように述べる。

「社会的責任の最大の限界は、マネジメントが仕える組織の本業における成果に支障をきたすことである。このことは、社会にとっての経済的機関である企業について特にいえる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

社会的責任の遂行には、自らのインパクトの処理であれ、社会問題への対応や貢献であれ、自らの事業機会に転換できる場合以外はすべてコストを生ずる。利益を削ればよいというわけにはいかないのだ。
発生するコストは、消費者や納税者に負担を転ずる必要がある。あるいは機会や便益を減ずる必要があるならば、雇用を減らす((生産を減らす)ことや生活水準を下げる(不便なままでいる)必要も生ずる。

「ここにおいて、マネジメントの責任はいっそう重いといわざるをえない。マネジメントたる者は、社会的責任が生ずることを予測し、問題解決のためのトレードオフを検討しなければならない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ジャーナリストであれば声高に「企業はすべての責任を追え」「市民を危険に貶めるのか」「労働者の雇用を確保せよ」と叫ぶだろうが、ドラッカーは至って冷静だ。

「何にもまして、マネジメントたる者は、事業上のリスクを負い、将来の活動に着手するうえで必要な利益の最低限度というものを知っておかなければならない。あらゆる意思決定において、この限度を知っておかなければならない。自らの意思決定について、政治家、マスコミ、社会に説明するためにも知らなければならない。彼らが利益の機能について無知であるかぎり、すなわち彼らが利潤動機なるものについて考えかつ論じているかぎり、社会的責任について合理的な意思決定をおこなうことも、それを組織の内外に対して説明することもできない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

これに関してドラッカーは、具体的に以下のような事項を挙げている。

・経済的な能力をわきまえずに、負担しきれない社会的責任を果たそうとすれば、直ちに問題を生ずる。
(ex.ユニオン・カーバイド社がバージニア州の失業対策のために環境対策コストを賄いきれない工場を稼働させたり、デルテック社が他の食肉加工業者が撤退相次ぐ中で操業を継続させたことを例示し、ドラッカーは「意図は立派であったが、社会的責任ではなく感傷的に行動しただけで責任の安請け合いに過ぎなかった」と厳しく指摘する。)

・自らに能力のない仕事を引き受けることも無責任である。それはある意味むごい行為である。期待をもたせた挙げ句、失望させる。

・(特に政治的な)権力を持たないことに、企業が出を出すべきではない。合法的な政治的主権たる政府に代わって、国家政策に関して権力を行使することは企業の役割ではない。社会がじゆうたるためには、政府の許可と勧奨の如何に関わらず、企業には行うべきでないことがある。敬して遠ざかっているべきである。もちろん、政府に代わろうとすることなどは許されない。自らの経済力をもって、自らの価値観を社会に押し付けることも許されない。
(これについては、ちょうど現在(2017年11月)公開中の映画、「ザ・サークル」(主演:エマ・ワトソン、トム・ハンクス
https://hlo.tohotheater.jp/net/movie/TNPI3060J01.do?sakuhin_cd=015153
)が、ソーシャル社会における支配的な企業の行動についての示唆に富んだメッセージを発しているので、ご興味ある方はご覧頂ければと思う。)

企業とは、組織とは、それぞれがそれぞれに特有の目的をもつ組織である。それらの組織は、それぞれの分野で成果をあげることを目的とする社会の機関だ。

「それらの組織が果たすべき最大の貢献、すなわち最大の社会的責任とは、自らに特有の機能を果たすことである。したがって、最大の無責任とは、能力を超えた課題に取り組み、あるいは社会的責任の名のもとに自らに権限のないことを行い、それによって、自らの成果をあげる能力を損なうことである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

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