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特集記事・コラム

2016.01.12 マネジメント

VOL.8 マネジメントの職務設計で陥りがちな罠。

事業をうまく展開するために、経営者である皆様も、試行錯誤しながら幹部の職務について規定し任せ、事業推進を分担されていることと思う。

経営とは、また、リーダーシップとは、「人をして事を成し遂げる技」であるのだから、この部分がいかに効果的に設計・実行できるかで、ある意味、8割方決まってしまうと言っても、決して大げさではないだろう。

しかし。

これが、なかなかうまくいかない。思い描いた通りには、どのマネジャーも動いてくれないし、下手をすると意図とは全く異なる方向に走られたりして焦る。

あるいは、こちらが期待し得ること認識していることと本人の自覚にズレがあり、「なぜもっと任せてくれないのか」などの不満が噴出。下手をすると、「見合った評価、処遇を与えてくれない」と退職してしまったりする。(僕も日々、エグゼクティブサーチ事業では多くのマネジメント人材とお会いしているが、辞めたい理由の第一がこの処遇への不満だ。)

一体、何が間違っているというのだろうか?

 
ドラッカーは『マネジメント』(1973年)の中で、職務設計の間違いについて述べている。ドラッカー曰くは、マネジメントの職務設計には6つの間違いがあると言う。

「第一に、最も一般的な間違いは、仕事を狭く設計し、人が仕事で成長することを妨げることである」(『マネジメント』)

マネジメントについては、特に上位職であるがゆえに、その後の昇進頻度や機会が減少するため、その職務を狭く設計してしまうと学び、育つ機会も、職務上の創意工夫の幅も狭まってしまい、当人が欲求不満や麻痺に陥るのだ。

「仕事はすべて、成果を通じて喜びを与えるものである必要がある。挑戦的であって報われるものでなければならない。仕事の喜びが昇進であったのでは、仕事に意味がなくなる。単純な算術の問題として、昇進の期待は裏切られるほうが多い。昇進をもって報酬や報奨とすることは間違いである。重視すべきは現実の仕事であって、次の仕事ではない」(『マネジメント』)

急成長企業が陥る罠として、「まあまあの仕事ぶりでも早く昇進していくことが当然とされている組織ほど、危ないことろはない」(『マネジメント』)とドラッカーは言う。そうした昇進ブームは早晩終わるからだ。次に来る世代が、上の重たい世代で頭を抑えられ昇進機会を失ったり、早くして昇進した世代が、その後の成長・昇進機会を失い仕事への興味を失ってしまうこということも起きる。「急成長中は、経験のある年配者を外から招くべきである」(『マネジメント』)。偏った年齢構造を避け、マネジメントの継続性と新陳代謝を担保しなければいけないのだ。

「マネジメントの働きを妨げる間違いの第二に、仕事とはいえない仕事、つまり補佐の仕事がある。前述の、あまりに狭く設計した仕事よりもさらに悪い」(『マネジメント』)

マネジメントは明確な貢献を果たさせなければいけない。マネジメントに補佐業務をやらせることは、「人を堕落させる。誰かの側近であることを利した人形使いとなるか、自ら誰かに取り入るご機嫌取りになるしかない」(『マネジメント』)。大企業によくいる、典型的な(悪しき)中間管理職イメージだ。これを撲滅せよ、とドラッカーは言う。まったく同感だ。

「補佐という職務は、その任務が明確に規定されているならば、若手のマネジメントにとって優れた訓練となる。ただし期間は限定する必要がある。一定期間の任務を終えたならば、マネジメントの仕事に戻してやらなければならない」(『マネジメント』)

「間違いの第三は、マネジメントが自分の仕事をもたないことである」(『マネジメント』)

お?これは、と思った。「マネジメントとは仕事である。しかしそれは、マネジメントがすべての時間を費やすほど時間を要する仕事ではない。マネジメントの人間の仕事は、マネジメントの仕事と自分の仕事の二つからなる。マネジメントの人間とは、マネジメント兼専門家(プロフェッショナル)である」(『マネジメント』)。

仕事を持たないマネジメントは、部下の権限を侵食したり、働く感覚を忘れ組織に害をなすようになると、ドラッカーは解説する。「かくしてマネジメントとは、単なる調整者ではなく、自らも仕事をするプレーイング・マネジャーでなければならない」(『マネジメント』)。

40年前に既にドラッカーは、プレイングマネジャーを推奨していた。その理由は、とても納得できるものである。昨今、「世の中がプレイングマネジャー化して、大変だ。辛い」という論調があるが、ドラッカーに言わせれば、まったく論点のズレた、「真摯さ」に欠ける(やる気のない人の)メッセージだと一刀両断されるだろう。

「第四に、マネジメントの仕事は、一人あるいはその直接の部下を使うだけでなしうるものにしなくてはならない」(『マネジメント』)

これは第三と通ずる、「仕事のための仕事」のようなものにマネジメント業務をしてはならないというメッセージだ。「会議や調整を常に必要とする仕事は間違いである。(中略)頻繁に出張しなければならない仕事も間違っている。仕事と会議が同時にできないのと同様、仕事と旅行も同時にはできない」(『マネジメント』)。会議会議で仕事をしている気になっている管理職や、拠点行脚を経営と勘違いしているトップには、耳の痛い話だろう。

「第五に、報奨の不足を肩書きで補ってはならない。もちろん、仕事の中身の不足を肩書きで補ってはならない」(『マネジメント』)

1973年にドラッカーがこう明言していたにも下変わらず、1980年代・90年代に日本の特に大手企業でインフレバラマキされた肩書き(本部長・本部副部長・部長・副部長・次長…)は、滑稽なバブル時代とその後遺症時代の風物詩とも呼ぶべきか。

「第六に、後家づくりの仕事は再考して廃止しなければならない」(『マネジメント』)

これはちょっと捉えにくいフレーズだが、「優秀な人が連続して失敗する仕事」「理屈ではよくできた仕事(だが、実際にはうまくいく可能性が極めて低い仕事)」を「後家づくりの仕事」と、ドラッカーは呼んでおり、これはひきづるのではなく、廃止し、仕事の再構築をしなければいけないと提言している。『マネジメント』の中では、国際事業の例(ある地域に現在のやり方で進出することが難しいケース)とマーケティングと販促を兼務することの難しさが挙げられている。

 
個々の事業で、マネジメントに求め、分担すべき職掌は異なるが、上記のような「マネジメント業務の設計に当たって、やってはいけない」ことをしっかり認識した上で、職務や昇進ルールを構築すれば、無用な機能不全を未然に防ぐことができる。

2016年、年初に、また新年度を迎えるに当たって、ぜひ、上記6項目について、御社のマネジメント職規定や昇進ルールの確認・見直しをしてみてはいかがだろう?

 
 

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