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2015.12.28 イノベーション / エグゼクティブ / マネジメント

VOL.7 永続的に成功する起業家には、大企業経験が必要?!

起業するタイミングは、いつ頃が適切なのか。割とよく目にする議題で、「若ければ若いほど良い」「ある程度の社会人経験を積み、30代早めまでのうちが良い」「年齢など関係ない」、それぞれの主張が古今東西交されてきた。

『実践する経営者』(2004年)の中で、この件に関する興味深いドラッカーへのインタビューが掲載されているので、少し長くなるがご紹介してみたい。

 
問:起業家を定義していただけますか?

答(ドラッカー、以下同):私の定義は古くさいものです。起業家とは富を生む力を資源に与える人たち。それだけです。

問:あなたは、中小企業と起業家的な会社は同じとは限らないと指摘されています。

答:中小企業の多くはイノベーションの力がありません。時間がないうえに野心がない。街角のタバコ屋だけではありません。中小企業と言われるものを見てください。人手がない。資源がない。現金もない。社長が雑用まですることはないにしても、大した違いはありません。毎日が戦いです。体系的でもなければ、経験もない。これに対して、今日成功している起業家には、大組織で5年から8年働いた経験があります。

問:それがどう役に立つのですか?

答:勉強しています。道具も手に入れている。キャッシュフロー分析や人の訓練、権限の委譲やチームのつくり方を学んでいます。それらの経験がなければ、たとえ成功してもいずれ追い出されることになります。たとえば、アップル・コンピュータの創立者ウォズニアックとジョブスのどこが悪かったかというと……。

問:お聞きしたかったのはそこです。

答:体系がなかった。経営のための道具もなければ知識もなかった。

問:あの会社は起業家精神の手本のように言われてきましたが?

答:私は以前、あの二人の青年は生き残れないと言ったことがあります。神様がことのほか不親切だったからです。

問:そう思われますか?

答:あまりに早く、あまりに成功しました。神様が破滅させようと思ったら、ああするでしょう。油にまみれて働いたことがない。汗水を流したことがない。簡単に成功した。その成功が彼らを傲慢にしてしまった。簡単なことを知らない。建築家でありながら、釘の打ち方も飾り釘がどのようなものかも知らないのと同じです。事業を始める者にとっては、5年から10年のマネジメント経験が必要です。この経験がないと初歩的な間違いを犯します。

問:大企業での経験のない者は事業を始めるなということですか?

答:そうではありません。たとえば、起業家精神についての私の本を読んで欲しいと思います。起業家精神の実際については、かなりのことがわかっています。起業家精神とはひらめきのことではありません。ひらめきを当てにして待ってはいけません。ハイテクの失敗率は7割ないし8割になりますが、ハイテク以外では失敗率はもっと低くなります。

問:それは、どうしてですか?

答:ハイテク以外の起業家には、会社や自分をマネジメントする能力があります。事業を始める者にとって、いちばん難しいのは自分自身の役割を考えることです。

 
このインタビューの原文は1985年。ジョブズはアップルを追われ、90年代後半まで不遇のときを送る。

しかし、その後、返り咲いてから世を去る2011年までの歴史に残る大成功は、誰もが知っているところだ。

ドラッカーは、間違ったのだろうか?

いや、まさに、「あの挫折の10年」があったからこそ、ジョブスはその後、偉大なる経営者へと転身できたのではないだろうか。それがなければ、上記のドラッカーの予見のごとく、「あまりに早く成功し、会社や自分をマネジメントする能力をもたず」まま、ビジネス史からは消え去っていたのだろう。

僕も多くの起業家を間近で見てきて、成功し続けている方、いっとき隆盛を誇った(ように見えた)が気がつくと消えてしまった方、それぞれを多く存じ上げている。(総数で言えば、やはり後者のほうが圧倒的に多いように感じる。)

社会人として、またマネジメントとしての基礎なく飛び出した人は、やはり中長期的に見るとなかなか辛そうだな、というのが雑感になるだろうか。

後付けで学ぶ、あるいはジョブスのように一度挫折し学び直して復活する。いずれでも、道筋はそれぞれだと思うが、王道を踏もうとするならば、やはりまず社会人のスタートはビジネスの土台をしっかりと学び身につけてから、勝負に出ることが、骨太に成長・成功していくためのメインストリームであることは、間違いないように思える。

 
 

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