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2018.03.12 エグゼクティブ / マネジメント

VOL.113 「最前線のマネジメント」型、権限と責任。

現場マネジメントの主体的な行動を望む経営者は、また、昨今の“VUCA(ブーカ)”な環境~Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)~に抗うためにも、「権限委譲」は非常に重要なことだと考えているだろう。
ドラッカーは、このことについて、どのように考えていたのだろう?

「現場のマネジメントの仕事を可能なかぎり大きなものとして最大限の権限を与えるということは、意思決定を可能なかぎり現場に近いところで行うということである。これは、従来の権限委譲の考え方とは根本的に異なる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

ん?最後のくだりが引っかかる。「従来の権限委譲の考え方とは根本的に異なる」とは、一体どういうことだろう。

いかなる事業を行うかはトップマネジメントが決める。そのための最終製品が決定され、事業上の目標が設定される。そこから、行われるべきことが、一つひとつ明らかにされていく。
いわゆる、ウォーターフォール型に、上から下へと意思決定が流れていく構造だ。

「しかしマネジメントの仕事は、下から決めていかなければならない。生産、販売、設計の最前線の活動からスタートしなければならない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

すべては最前線のマネジメントの仕事ぶりにかかっており、上層のマネジメントの仕事は、この最前線のマネジメントを助けるための派生的な仕事にすぎない。ドラッカーは、そのように断言する。

「あらゆる権限と責任が最前線にある。彼らにできないことだけが上層にゆだねられる。いわば、最前線のマネジメントが組織のDNAである。上層の機関のなすべきことは、すべてそこで規定される。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ここでドラッカーがポイントとして挙げているのが、「最前線のマネジメントにできないことを期待しないこと」だ。
工場長は営業マンの目標設定や報酬を決めることはできないし(役割上、直接の関係と権限がない)、某エリアを担当する営業部長は、担当外のエリアの業績や人員配置には関係を直接は持てない。ラインの責任者が本部スタッフのことを決めることはできないし、部門を担当するマネジメントが全社に渡る意思決定をすることはできない。

「権限と責任は、担当する仕事によって決まってくる。これは、社長にいたるあらゆるマネジメント層についていえる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

これは、案外、日本企業の経営者(というか、日本人経営者)は、しっかり認識しなければいけない部分ではないかと思う。役割は役割としてありつつも、結構、曖昧な中で「もっと全体を見ろ」「組織間の壁を超えろ」というようなことを経営者はマネジメントに求めているケースが多く、それはとても良いことでありながら、ある面、彼らが持てない権限と責任についてまでを期待してしまっていることは、少なくないのではないだろうか(私自身を含めて……)。

その上で、ドラッカーは、マネジメントが行うことのできる決定の限界については、一つだけ簡単なルールがあると言う。
それは、

「明文をもって規定されていないかぎり、権限は下位のマネジメントにある」

というルールだ。要は、「ダメと言われていないこと以外は、権限を有するので、どんどんやりなさい」ということで、これがドラッカーの言う「権限委譲」のあり方だ。
責任を持つ範囲下において、当該マネジメントはできることをやれるだけやる権限と責任を有する。この範囲内において「なさざるの罪」がある訳だ。ただし、そのマネジメントの責任範囲を超える部分については、より上位のマネジメントがしっかり責任を持ち、その中でやれることをすべてやらなければならない。部下マネジメントが有する権限と責任の範囲を一式除いて。

「担当する仕事について行うことのできない決定は、すべて明文をもって明らかにしておかなければならない。他のことについては、すべて権限と責任を有するものと解さなければならない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

今回ご紹介した責任と権限の構造をしっかりインストールし運用できている企業こそが、時代性を超えて、「各自が主体性とやりがい、責任を持って業務に当たっている活性化企業」ということに間違いはないだろう。

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