FEATURES

特集記事・コラム

VOL.2 禅とは、壁を乗り越え〝次のステージ″に行くための道。(2/5)

1 / 2 ページ

井上 個人的な話で恐縮ですが、僕はこれまでの人生で2回ほど、精神的にとてもしんどい時期がありました。「病んだ」というレベルではないんですが、その2回とも、禅や東洋的な考え方に触れ、助けてもらったんですね。
1回目は、中学3年生の頃。当時、バスケットボール部の部長で忙しくて、でも、受験勉強も頑張らなければいけないし……という中で、自分で勝手にイライラしては少しばかり爆発していたんです。そうしたら、父が「これを読め」と、大徳寺大仙院の尾関宗園さんという禅僧が書かれた本を渡してきたんです。父はかなりの読書家でしたが、僕に対して特定の本を直接勧めることはめったにありませんでした。珍しいことで、とてもインパクトを受けましたが、その尾関宗園さんの本がめちゃくちゃ面白く、かつ深くて。それで、僕はその本の内容に勇気づけられて、すごく気が晴れたんですよ。本は今でも持っていますし、大人になってからは何度かその住職にお会いしに行ったほどです。
また、2回目のしんどい時期は、社会人になり、リクルートで新規事業をドロドロになってやっていた2年間です。これは人生の中で一番辛かった。そのときにも、思想家の中村天風さんの本を読んで心が晴れたんですね。こういう経験というのは、多くの皆さんも持っていらっしゃるものなんでしょうか。西洋人の方などは、どうなんでしょうね。

島津 ぎりぎりまで追い込まれて何かに出会う――、そこで禅に出会うということはすごく多いと思いますね。私も41、2歳くらいのときに、仕事で追い込まれて顔面が半分麻痺してしまい、もうダメだと思った時期がありました。そのときは、本を読んだり、身体を動かしたり、太陽を拝んだりして、自分から動いて救われた部分もあったんですが、その後、47歳で独立起業したときに、禅と出会いました。経営を軌道に乗せるまでには、プレッシャーに何度も押しつぶされそうにもなりましたが、そこで自分を救ってくれたのは禅でした。こんなふうに、人が禅と出会うときというのは、成長の中の一つの節目というか、限界や壁に当たったときが多いと思いますね。

井上 戦後を支えた名経営者や政治家、各界の著名人、一流アスリートなどの中にも、禅の考え方に傾倒していった方は多いですね。

写真 2018-02-06 18 58 04

島津
 そうした方々が禅に興味を持つことが多いのは、彼ら・彼女らが、それだけタフな環境というか、人生を選択してきているからでしょう。そんなタイミングで壁を乗り越え、〝次のステージ〟に行くために禅と出会っているのではないかと思います。

井上 先ほど出たように、「マインドフルネス」の流行や、座禅を組み、宇宙・自然の摂理を軸とすることの重要さが見えてきたのは、その手前でわれわれが工業的なことや経済的なことに向かい過ぎていたことへの反動、また、個人で言えば自然体で生きていなかったことへの反省があるのでしょうね。

島津 たぶんそうだと思いますね。だから普通に「元気で楽しい」という人に対して禅の素晴らしさをいくらアピールしても、何も響かないかもしれない。禅に出会わないまま人生終える人もいっぱいいるわけです。それが良いとか悪いとかではなくて、宗教的な観点から言うと、辛いことを通じてでも禅に出会えたことはラッキーというか、なかなか出会えない中で真理に到達するための入口に出会えただけでも特別なことだ――みたいな言い方もある。だから、一流の経営者やスポーツ選手の方などが、次のステージに行くタイミングで禅と接点を持つことが多いのでしょう。
ただ、今は世の中全体に強い負荷がかかっているので、一部の人だけが熱心に取り組むような、例えば「宗教としての禅」とか「精神修業としての禅」ということではなくて、一般の人がもっと気軽に、日常生活の中で禅に出会える機会が求められているし、それをつくるべきだと思っています。
もっと言うと、禅は子供たちの教育には絶対に必要だと思います。僕が小学校のころに、なぜこれを教えてくれなかったのかと思いますね。禅の心を知り、座禅を組んでイライラしなくなったら、友だちをいじめることなんてなくなりますよ。それから、最近はLINEのやり取りの中で仲間外れにされたり、既読スルーされたりして、学校に行きたくないという子供たちがいますよね。そういう目に遭ったときには、「そんなことはどうでもいいんだ」「自分は自分なんだ」という心が持てればいい。
さらに、科学的な部分で言えば、座禅をすると集中力が高まるということはいろいろな研究で明らかになっています。だから禅を取り入れれば、スポーツや勉強、芸術などで必ず成果が出るはずです。ただし、その際は現代風に、若い人たちがとっつきやすいものとして出会ってもらうことは必要かもしれません。

島津 清彦
(しまづ・きよひこ)
株式会社シマーズ 代表取締役

元スターツピタットハウス代表取締役。元ソニー不動産取締役。
東日本大震災での被災を機に上場企業の社長というキャリアを捨て、2012年、経営コンサルタントとして独立起業。その後、多くの世界一流リーダーが禅に辿り着くことを知り、自らも出家得度し仏門入り。
経営者と禅僧という二つの顔をもちながら、現在は官公庁、大手企業を中心に禅を活かした経営・組織開発コンサルティングやリーダーシップ研修、講演、坐禅指導等を行う。
著書に『仕事に活きる禅の言葉(サンマーク出版)』『翌日の仕事に差がつく おやすみ前の5分禅(天夢人)』がある。
一人一人が自分の夢や使命に気づき、充実したキャリアやライフを送れるようサポートすることが使命。座右の銘は一日一生。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

他の記事を読む

VOL.5
リーダーが禅を学べば、組織が大きく変わる。(5/5)
井上 禅と座禅の話、いや、面白いですね。これまでいくつかキーワードになる禅語を教えていただきましたが、そうやって言語化されているところで気づかされる部分と、もう一つ、島津さんが何度もおっしゃっている、...
more
VOL.4
禅で磨く“経営者の心・技・体”。(4/5)
井上 先ほど島津さんがおっしゃったように、強い覚悟のようなものを持って一つの道を進んでいる人々が、極めている部分の閾値を越えたときに禅の世界に入る――。あるいは、時代の流れで、今はごく普通に暮らしてい...
more
VOL.3
自分の持つ全ての機能を発現させよ。(3/5)
井上 以前、座禅をやっていた人の話を聞いたら、「社内外で受ける各種研修内容のエッセンスが、すでに禅の言葉の中にあったことに驚いた」と。これは興味深い感想だと思いました。一般のビジネスパーソンの研修とは...
more

ARCHIVE

ALL (5)

2018年 (5)

新着記事を
いち早くお届けします!

株式会社 経営者JP
〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-16-2
VORT恵比寿Ⅱ (旧称:K&S恵比寿ビルⅡ )

お問い合わせ ・ ご相談

- 「リーダーシップ3.0®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5435135号)
- 「リーダーシップ4.0®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5934148号)
- 「経営者ブートキャンプ®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5918454号)
- 「エグゼクティブ ブートキャンプ®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5934143号)
- 「マネジャー ブートキャンプ®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5934145号)
- 「リーダー ブートキャンプ®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5934149号)
- 「経営者ワークアウト®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5918455号)
- 「エグゼクティブ ワークアウト®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5934144号)
- 「マネジャー ワークアウト®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5934146号)
- 「リーダー ワークアウト®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です
(登録番号:第5934147号)