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VOL.1 ダニエル・キム教授が提唱する「組織の成功循環モデル」は、個人が成功するための考え方にもなる。(1/5)

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井上 小杉さんの著書『元人事部長が教える「結果を出す人」の働きかた』(大和書房)を興味深く拝読したのですが、その冒頭でダニエル・キム教授(マサチューセッツ工科大学)の「組織の成功循環モデル」を紹介されていましたよね。《組織の成功は「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」の4つの要素にどのような順に取り組むかで決まる》。そして、「関係の質」から取り組むのが「Good cycle」で、「結果の質」から取り組むのが「Bad cycle」だという話でした。
小杉さんは、この理論は組織の成功だけではなく、《一社員が成功するための考え方にもなる》と書かれていましたが、まずは、そのあたりからご説明いただいてよろしいでしょうか。

小杉 それはこういうことです。企業では結果を求められるので「では、どうやって結果を出すか?」という話を考えます。管理者なら、「どうやってチームで結果を出すか?」、社長なら、「どうやって会社で結果を出すか?」と考えるわけですが、そうすると循環はつながりません。結果に集中すると、特に結果が出ないときは「できた、できない」あるいは「どこが悪い、何を改善すべき」という話になって、疑心暗鬼になり守りの姿勢をとるようになり、関係の質は悪くなります。そして、関係の質が悪くなると思考停止に陥り、後ろ向きになって、「言われたことだけやればいい」と思うようになるから行動が委縮する。行動が起こらないと結局は成果につながらない。すると責任のなすり付けあいや自己防衛により、関係がさらに悪化する――というのが、多くの企業が実際に陥っている問題ですよね。

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井上
 すごく古くて新しいテーマですが、「職場活性」や「やりがいを持って働く」といったことなどが、今のお話とつながっているなと改めて思いました。

小杉 後で話にも出てくるであろう「リーダーシップ3.0」や「リーダーシップ4.0」に関わってくる話だと思うんですが、勇気を持って関係性の質を高めることからスタートすると、思考が前向きになって、みんなで意見を出すようになる。信頼関係も醸成されるので、安心して行動が取れる。すると、自発的に新しい挑戦もするようになる。みんなが行動をとれるようになると自ずと結果が出る――。あの本でそれを引用したのは、「個人のレベルでも一緒ですよ」ということが言いたかったのです。「目の前の、与えられた課題をいかに解くか?」ということをやってしまうと結果が出ない。そうではなく、「いかに周りとの関係性やネットワークを築くか?」というところからスタートすると、循環が回り出します。

井上 それはうなずける話ですね。そういったことも含めて、今回ぜひ、いくつか小杉さんに伺ってみたいことがあります。1つは、昔に比べて、より結果を求めに行ったときに、時代の流れもあって、社員が窮屈に感じる状況が蔓延しているように感じますが、実際に最近激しくなっているのでしょうか。

小杉 『リーダーシップ3.0』(祥伝社新書)の中にまさに書いてあるのですが、時代背景の変化、労働環境の変化、雇用関係の変化ということはどうしても起こりますよね。昔は新卒で入って、基本的には一生そこに骨をうずめるという覚悟で他に選択肢もなかった。会社を辞めるというのは裏切り者であり、敗者であり、逆に、基本的には長くやっていれば定年までいられて、後は年金で暮らせる。だから冷や飯を食わされても我慢したわけです。そういう上下関係のある時代に「やれ!」と言われたらやりますよね。
それが横並びになって、会社側も社員にいてもらう努力が必要だし、本人もエンプロイアビリティを高めるために自助努力をし続けないといけなくなった。自己投資しないと、今は雇用者が変わってしまいますからね。急に外資系になったり、ファンドが入ってきたりすると、その時点で評価されて、価値がないとされた人間は「要らないよ」と言われてしまう。

小杉俊哉
(こすぎ・としや)
合同会社THS経営組織研究所 代表社員/慶応義塾大学大学院理工学研究科 特任教授/立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授
早稲田大学卒業、NECを経てマサチューセッツ工科大学に私費留学、経営大学院修了。帰国後、マッキンゼー、ユニデンおよびアップルの人事責任者を歴任し、独立。
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授などを経て、現職。他にエスペック株式会社、ふくおかフィナンシャルグループ・福岡銀行など数社の社外取締役を務める。
専門は、人事・組織、キャリア・リーダーシップ開発。組織が活性化し、個人が元気によりよく生きるために、組織と個人の両面から支援している。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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