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特集記事・コラム

VOL.2 社員がイキイキと働いている会社はなぜ、「経営がガラス張り」で「評価がフェアに思える」のか?(2/5)

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井上 前回、今の上司には内発的動機付けという、今までと違うコミュニケーション能力が求められているが、強権的な命令で部下を動かしてきた彼らはそのトレーニングをしてきていない――という指摘が前川君からあったけれども、上に立つ世代の人は、そのへんのことが本当にはわかっていないんだろうね。自分が当たり前のように上の言うことを聞いてきたから、部下も言うことを聞くものだと思っている。

前川 その点、僕たちが育ったリクルートなんて、入社一年目から「お前はどうしたいんだ?」って聞かれた。こんな話は普通の会社にはないよね。一般的には、「お前がどうしたいなんかどうでもいい。つべこべ言わずにこれをやれ!」と言われるわけで、それでは自立性や思考力といったことが育たない。だから、自分が上司になったときも、部下に「やれ!」と言ったら動くと思ってしまう。

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井上 ミドルやシニアクラスの社員の問題点ということで関連しつつも、話が少し飛ぶけれども、僕は企業から依頼を受けて外部から幹部社員や経営者を採用する手伝いをしていることもあって、彼らの甘さを感じる場面があるんだよね。命令1つで部下を動かせるというのは、その代わりに終身雇用や年功序列などを保証していたということだから、いざ自分が転職を考えるときにも安定とか身分保証が前提になっている人がいる。
もちろん、何の保証もなしに突撃はできないけれど、それなりの責任を負った中に自由や好待遇がある――という、企業と社員の関係性の捉え方がおかしくなっている気がする。例えば、転職の相談を受けていると、組織長クラスの中にも「こういう役割をくれ。年収はいくら以上を保証してほしい。しかも安定した地位を」ということをまず主張する人がいるからね。そんな都合の良い話が世の中にあるわけがないんだけれど。

前川 僕らも幹部層の人たちにキャリアカウンセリングをする中で、それは感じることがある。例えば、大企業のメーカーで年収700~800万円もらっていた課長さんが、「給料も上がらないし転職したい」と言ってすごく不満を溜めていた。しかし、転職に関する希望をうかがったら、「年収は100万円ダウンまででお願いします」と言う。そこで僕が、「正社員で年収700万円をもらおうとしたら、社会保障
も全部その上に乗っかってくるから、その3倍くらいは粗利に貢献しないといけないですよね?」と諭すように言ったら、「それ何の話ですか?」とキョトンとしていた。商売の基本をわかっていないんだよね。

井上 それはよくある話。僕も同じことを言ったことがある。待遇に不満を持っていたある管理職の方に、「現在、部の目標はどのようになっているのですか?」と尋ねたところ、「部員5人で年間の売上が2000万だ」と。単純に5で割ったら400万。それなのに、その人は年収800万くらいもらっていた。その時点で帳尻が合っていないよね。本当は会社に感謝しなければいけない話だと思う(苦笑)。
もっとも、その部署に対する会社の役割の与え方もあるから、その管理職の年収の高さ自体を否定するつもりはなくて、僕がそこで聞きたかったのは、「今の会社は本来、このようにすべきで、そうすればこのように事業も上手くいく/改善できると考えている。しかし、どう考えてもその策が妥当だと自分は確信しているが、どう提言しても経営者や会社に受け入れてもらえず、自分ではこういうことをしたくてもできない。それであれば、確信する自分の考えを取り入れてくれる可能性のある場、自分の力を発揮できる環境を探してほしい」というリクエストだった。そこまで考え尽くした上で言ってくれれば、僕もやりようがあるわけだけど、その人は、現状の問題点をまったく理解していなかった。日本の会社は、こういうミドル・シニア層の人はまだまだ多いと思う。

前川 多いよね。ただ、僕も自分で起業してみて初めてわかることがたくさんあった。だから、商売の基本が理解できていない方々とお会いしていて僕が思うのは、環境がそうさせているんだということ。例えば、1940年代に日本で働いている人たちの半分は、自営業と家族従事者で、サラリーマンは5割しかいなかった。ところが、今は9割がサラリーマンになっている。しかもGHQが原案を作った源泉徴収、年末調整という諸悪の根源があって、本来は国や自治体がやる税徴収を企業にやらせている。「税」というと反発が来るから「社会保険」っていう別名の項目まで作ってさらに上乗せして、とりっぱぐれのないように企業に徴収させている。だから、会社員は、その徴収額が、人によっては自分がもらっている手取りの半分くらいはあることをあまりわかっていない。
それに加えて、もはや現実的ではない年功序列幻想がまだ残っているから、若い時期はちょっと収入が少ないけど中高年になって徐々に上がっていくという、即時性でペイしない仕組みもマジックになっていて、余計に煙に巻かれてしまっている。

井上 煙に巻かれているよね。終身雇用的なことでいうと、ある面で後払い制になっているから、貢献と自分の収入とのバランスがとれていない。そこでみんなは、社歴とポジションみたいなところに貼りついているけれど、それはある意味、幻想だからね。

前川孝雄
(まえかわ・たかお)
株式会社 FeelWorks社長・株式会社働きがい創造研究所会長・青山学院大学兼任講師
「コミュニケーションが人と組織を変える」をスローガンにする人材育成の専門家集団(株)FeelWorksグループ創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。独自開発した「上司力研修」「上司力鍛錬ゼミ」や「人を活かす経営者ゼミ」、「育成風土を創る社内報」などを手掛け、300社超で「人が育つ現場」づくりを支援している。ミニドラマを用いた「働く人のルール講座」、「キャリアコンパス研修」、「女性幹部リーダー養成研修」など、時代性を踏まえた先進的な研修プログラムも提供している。2017年に中小企業支援の(株)働きがい創造研究所を設立。『上司の9割は部下の成長に無関心』『「働きがいあふれる」チームのつくり方」などベストセラー著書多数。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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