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VOL.5 AIを上手く使うということは、人間とは何かを深く知るということと同義語である。(5/5)

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井上 ちなみに、藤野くんは、採用人事に関することや、流行りの「HRテック」については、どう見ているの?

藤野 採用人事については、2つ思うところがあります。例えば、エントリーシートの添削をAIが代行するという話がありますが、それは先ほど話した《会議の内容を音声認識で議事録(テキスト)化する》というのと同じレベルの話だと思います。ここには、「そもそもエントリーシートは何のためにあるか?」という議論が抜けている。もちろん、わかって実践している企業もありますが、「うちも、それができたらいいよね」という認識で安易に飛びつこうとする採用担当者がいらっしゃるのであれば、そこには警鐘を鳴らしておきたいです。そもそも、エントリーシートって何のためにあるんですかね?よくわからないですよね。もともとは学校歴に囚われずに選考しようとソニーが始めたわけですが、今のエントリーシートは学校名をばっちり求めている。エントリーシートは何のためにあるのかを断言できる人がいないとしたら、そもそもエントリーシートは要らないのかもしれない――ということを考えたうえで、AIに仕事を任せるべきかどうかというのを議論すべきでしょう。そもそも採用業務の中で、やらなくていい業務をただルーティンとしてこなしていることはないか?AIに代替する前に、そもそもそれは必要な業務なのか?という議論をすべきだというのが1つ目です。
2つ目は、エントリーシートの添削を任せるといっても、これまで人間がやっていたやり方をAIに学習させることは意味があるのか? という視点です。人間にはたくさん見落としやバイアスがあるはずなのに、人間が見ていた過去のデータを正として学習させ、AIに人間と同じことをさせるとなったら、人間並みに「アホな」AIができることになってしまう。人間なりに賢いとも言えるし、人間並みにアホなAIができるとも言えますが、そうすると、AIでやったところで、これまでと同じように良い人材の見落としが起きるかもしれないとも考えなければならない。

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井上 エントリーシートもそうだと思うし、どっちかというと、社内のパフォーマンス評価のところが、今の話と同じことだと思う。昇進昇格評価の情報がビッグデータになり得る規模の企業というのは、トヨタやNTTを筆頭として数十万名〜せめて数万名の社員がいる企業群くらい。たかだか数千人以下の規模で機械学習をかませても精緻な情報は出てこないし、失礼を顧みずに言えば、その数十万名〜数万名規模の大企業が的確に昇進昇格評価がなされていているか、正しい採用人事データを持っているかといえば甚だ疑わしい……みたいなことはちょっと思うんだよね。

藤野 なるほど。おっしゃる通り、人事評価にAIが入っていくということは、そこが一番意味があることですよね。データドリブン(得られた情報を元に検討・意思決定などを行う)と言われますが、データを元に意思決定するということが人事の世界に入って行くべきだと思います。今までよくやられていた人事・昇格評価は、給料の高いおじさんたちが集まって、「あいつはがんばった」とか「あいつは今年しんどかったけれど事業部が調子悪かったから大目に見てやろう」などと、データに基づいて議論していそうで、実は意外と感情論で話しているわけですよ。それも3、4時間話すとけっこう疲れてしまって、ちょっとタバコを吸って戻ってきたら、「よしあいつ昇格!」となっているとかね(笑)。そういう鶴の一声みたいなことは、けっこうあると思っています。
そこに対してデータを扱う、つまり、その社員の売り上げデータや日常のプロセスデータが集まってくることによって、誰が昇格候補なのかを予測するところまではAIがやっていいと思うんです。それによって実は不毛であった「議論」が短縮されることになりますから。しかし、AIがピックアップしてきたことを吟味・決定するのは、あくまで人間です。

井上 人間は、上がってきたデータを検討することに大半の時間とエネルギーを使うべきだ、と。

藤野 もう既にそういうことを実行している会社はたくさんありますよ。「AIが『この人はがんばっている』と言っているんだけどどうする?」みたいなことを話している会社はあります。そういったデータドリブンをもっとすべきだと思うんです。
トライ・アンド・エラーを繰り返し、データが溜まり、ファクトからデータ分析をしていくことがこれからは必要だと思います。例えば、今は人事データをそもそも溜めていないので、日常のプロセスデータを溜めていくことが大切なんです。溜めていくことで予測するのはAIがやるんですが、予測した結果を参考材料にして、対話と意志決定は人間がやります。これは別なんです。つまり、今までは、「彼が候補としていいんじゃないの?」とするところまでに8割の時間を使って、最後は鶴の一声で、となっていた。これからは、人間がやる対話と意志決定に8割の時間を使うべきです。「データドリブンを人事ももっと意識すべきだ」と言うと、「人間はデータで測れないんだ」という反対も出ます。もちろんそうです。だからこそ、データで測れる部分はどこなのか? とトライ・アンド・エラーをすることに価値があるんですね。

藤野貴教
(ふじの・たかのり)
株式会社働きごこち研究所 代表取締役 ワークスタイルクリエイター

アクセンチュア、人事コンサルティング会社を経て、東証マザーズ上場のIT企業において、人事採用・組織活性・新規事業開発・営業MGRを経験。2007年、株式会社働きごこち研究所を設立。「ニュートラルメソッド」を基に、「働くって楽しい!」と感じられる働きごこちのよい組織づくりの支援を実践中。「今までにないクリエイティブなやり方」を提案する採用コンサルタントとしても活躍。グロービス経営大学院MBA。
2015年より「テクノロジーの進化と人間の働き方の進化」をメイン研究領域としている。日本のビジネスパーソンのテクノロジーリテラシーを高め、人工知能時代のビジネスリーダーを育てることを志として、全力で取り組んでいる。 著書:『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』(かんき出版)
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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