2017.04.03
VOL.8 成功する経営者の脱却力
「イノベーションは起こそうと思って起こせるものではない。追い込まれるからこそ、イノベーションは生まれる」
かつて多くの日本人に知られていた定番商品を10年で売り上げ3倍、利益5倍に導いたことがあった。なぜ、こんなことができたのか。売り上げの伸びが長期にわたって完全に止まっていたから。新しい取り組みを進めざるを得なかったからだ。
テレビCMをすべてやめ、PR戦略に切り替えるという大胆な策を打ち出した。こうなれば、PRでなんとかするしかない。ここから画期的なアイディアが生まれた。
今は会社の本丸ともいえる事業の大変革に取り組んでいる。イノベーションは成功し、大きな話題になっているが、ここでも成功の理由は、事業が停滞どころか右肩下がりになってしまっていたこと。ピンチがイノベーションをもたらしたのだ。
もうひとつ、印象的な取材が、中国でスーパー事業を立ち上げ、大きな成功をもたらした元中国室長だった。2万人を率いた営業本部長から、部下ゼロの中国室長へ。当時は1996年。北京にはロバが闊歩していたという。
日本では大手でも、中国ではまったく相手にされなかった。仕入れ先が信用してくれない。だから仕入れができない。「詐欺師ほど立派なものを作ってくる」と、パンフレットは、目の前でくずかごに捨てられた。
そんな中、背水の陣で日本からやってきた8人のスタッフで奮闘する。現地の本当の生活を知るために、ゴミ回収車が来る前に、ゴミ袋をすべて空けて中身を調べることまでした。そうやって本当のニーズをつかみ、後に大変な繁盛店を作る。今は中国の事業は、日本の事業を超えるスケールになっている。
逆境に追い詰められたとき、地を這えるか。「ここまでやるか」というところまでできるか。うまくいく経営者の凄みは、ピンチのときにこそ出る。
実際、日本のビジネスで最もイノベーティブなもののひとつがコンビニだが、コンビニほど熾烈な競争をしている業界はない。ある経営者は語っていた。
「同じものを扱って、同じような店舗で戦う。本当に厳しい」
しかし、だからこそイノベーションが生まれる。厳しい競争環境を受け入れ、追い詰められることをポジティブに捉え、前に踏み出せるかが問われる。