2017.03.13
VOL.5 成功する経営者の人間力
一代で兆の売り上げを持つ企業に育て上げたカリスマ経営者が語っていたのが、「しんどい経験」だった。
彼は語っていた。「まず知っておいてほしいことは、人生というのは、思うようにならないということ。そして思うようにならないことに直面したとき、そのことを肯定してほしい。悲観しないでほしい。一見、不幸に見えることも、実はそれが本当の不幸とは限らないから。それも自分の人生だと受け入れて、与えられた環境の中で前向きに明るく必死に生きていく。これが一番大事。その意味では、むしろ逆境の中から這い上がっていく立場になったほうが、大きな収穫を得られるのかもしれない。私の人生がまさにそうだった」
受験に失敗、結核を患い、戦争によってすべてを失い、就職も大不況でままならなかった。決まったのは、大変なボロ会社。今にもつぶれそう。同期の大卒5人はみなやめた。人生はどうしてうまくいかないのか、思い悩んだ。しかし、世間を恨んでも仕方がない。希望を捨てず、未来を信じて、仕事に打ち込んでみた。これが、彼の人生を変えることになった。心の持ちようを変えた瞬間、人生は転機を迎えた。
彼はこうも言っていた。「逆境に追いやられなければ、ここまで頑張れたか。今ほど納得のいく人生が送れたか。今は結果的に、自分の厳しかった境遇に感謝している」
苦しい経験は、誰もがする。それを、どれだけ自分の血肉にできるか。どれだけ真正面から見つめられるか。これが人間力を鍛える。そして苦しい経験があればこそ、人の気持ちもわかるようになる。自分に対する厳しさも生まれるようになる。
もちろん人情肌の経営者ばかりではない。怜悧でキレ味鋭い人もいた。だが、そういう人たちにも、どこかチャーミングなところがあった。ちょっと鈍くさい。どこかかわいげがある。それが、不思議な魅力を作っていた。
もうひとつ、人間力といえば、人を肩書きで見たりはしない、ということだろうか。人のよって態度を変えない。これは、すぐに相手には伝わってしまう。そして、正しいことをしようとする。正しいことに、人はついていくのである。