2017.02.20
VOL.2 成功する経営者のスキル
優れた戦略を描くことができても、それをやり抜くことができなければ、絵に描いた餅に過ぎなくなっしまいかねない。その意味では、戦略以上に重要なことは、実行する力、ということになるのだと思う。
逆にいえば、戦略そのものは決して難しいものではない、と語っていた経営者は少なくなかった。むしろ、シンプルなケースのほうが多い。やるべきことは意外にすぐに見つかるものだ、と。
外資系のトップから日系のメーカーのトップに転じて、7年連続の最高益に導いている経営者がいる。驚くべきは、1%台だった営業利益率が10%台になったことだ。儲かる会社に変貌したのである。
彼は取材でこう語っていた。「難しいことはやっていない。儲けるための仕組みを作っただけだ」と。そしてそれを粛々と押し進めたら、営業利益率は一気に上がっていった。こうも言っていた。「日本の会社は、儲ける気がないんじゃないか」。やるべきことは難しいことではない。それをいかにやり抜けるか。これが結果の大きな違いを生んでいたのである。
ユーザーから圧倒的な支持を受けている人気ウェブサイトも、強いこだわりを持って取り組んでいるのは、徹底的なユーザー志向だった。それを、とにかくやり抜いていた。こんな言葉が印象に残っている。
「サービスの送り手というのは、知らず知らずのうちに、ユーザーに甘えてしまう。“このくらいはできて当たり前だよね”ということを言語化されないレベルで思ってしまう。お客さまからすれば、それはとんでもない傲慢に映っている」
それこそトップページに検索窓を置けば、ユーザーは気づくだろう、などと考える。しかし、実際には気づかないことがユーザーテストでわかったのだそうだ。そんな検索窓を置いてしまっただけで、サービスとしてはアウトになる。
外資系に席巻されながらも、今なおどの店も混んでいる日系のコーヒーチェーンは、社長自らが「細部までの意識」を貫いていた。コーヒーの鮮度、カップの曲線、味を守る業者の選定……。それをこだわり抜いて徹底していることが、多くの人に支持される店のクオリティを作りだしていたのだ。