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特集記事・コラム

VOL.3 自分の持つ全ての機能を発現させよ。(3/5)

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井上 以前、座禅をやっていた人の話を聞いたら、「社内外で受ける各種研修内容のエッセンスが、すでに禅の言葉の中にあったことに驚いた」と。これは興味深い感想だと思いました。一般のビジネスパーソンの研修とは違い、島津さんのように禅僧の方は、悟りの境地を一つの目標として修行されているわけですが、共通点みたいなものもあるんでしょうね。

島津 悟りへの道には二つの道があります。一つは先ほどお話しした「只管打坐(しかんたざ)」。これは曹洞宗の教えですが、言葉にできないことを感じ取るために、ただひたすら座禅をする。もう一つは、臨済宗の禅問答(公案)。例えば、「両手を叩くとパチンと音がする。ならば片手ではどんな音がするか?」(隻手の声)といった問いかけが有名ですね。この中に気づきがある。これって、まさにコーチングなんです。問いの立て方みたいなところが似ている。
こうした「只管打坐」と禅問答の両方を上手くパラレルでできると、より早く悟りに到達できます。ただし、禅が難解なのは、目的・目標を持ってはいけないところです。いけないというか、ただ座っていることが悟りの姿であって、「初回の座禅の、一番純粋な気持ちの状態が実は悟った姿だ」ということが答えだったりするのです。ただ、それもだんだん、両方受け入れるという発想からすると、腹落ちしていく。だから面白いんです。好奇心が次から次へと出てくる。

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井上
 好奇心というのは、どんなことでしょうか?

島津 例えば、以前、「人間は最終的に善なる生き物だ。それなのになんで戦争があるのか?」とか「貪欲にお金を稼ぐのは悪いことなのか?」とか「悟ってしまったら山に籠って座禅をするだけなのか?」などと、ふと思ったことがあったんです。それで調べてみたら、悟りの後のまた悟りという、「後悟の修行」というのがあって、修行がそこまで進んで気分は穏やかでニコニコになったけど、さあ、どう生きるのか? となったときには、現実を生きることになりますよね。俗世間の中で、より良い行動や言動、――これは宗教的には救済という言い方をするんですが――をしていくことになる。そう考えると、「なんだ、やっぱりビジネスという手段を使って禅を伝えるやり方はある。禅に関心を持ってもらえるなら、頭も金髪にしたっていいじゃないか!!」と思えるようになりました。スポーツ界の方や子供たちが「この人面白い!」と言って興味を示してくれるのなら、ちょっと変わっているくらいがちょうどいい。挨拶にしても、堅苦しく「代表取締役社長」などと名乗って、「どんな人なんだろう?」と相手の心理的ハードルを高くしてしまうよりは、「コニャニャチハ~!」とやった方が(笑)、より相手に届くのではないかと思っています。頓智で有名な一休さんなども、調べてみると、かなりはめをはずしていますからね。

井上 まさに「十牛図(じゅうぎゅうず)」の10枚目の絵ですね。(=十牛図は悟りにいたる段階を10枚の図で表したもの)

島津 そうです。「入鄽垂手(にってんすいしゅ)」の図を見たときに、僕もなるほどなと思いました。絵の中の人物のように、俗世間でビジネスを通じて、人々に禅の教えをわかりやすく語りかけていこう、より良い方向に影響を与え続けようと思っているんです。

井上 僕は今も正しくわかっているとは思わないのですが、人間って若いときには、非常に厳格で完璧な姿みたいなものに純粋に憧れる時期がありますよね。でもそれは現実の世界にいないものです。事実、多くの宗派のトップの方の考え方というのは、意外と柔軟で度量が広いところがあるような気もします。現実に適応しているというのはそういうことなんだ――みたいなことが、僕も大人になってから少しわかってきたような気がするんですよね。

島津 本当にそうだと思いますね。

島津 清彦
(しまづ・きよひこ)
株式会社シマーズ 代表取締役

元スターツピタットハウス代表取締役。元ソニー不動産取締役。
東日本大震災での被災を機に上場企業の社長というキャリアを捨て、2012年、経営コンサルタントとして独立起業。その後、多くの世界一流リーダーが禅に辿り着くことを知り、自らも出家得度し仏門入り。
経営者と禅僧という二つの顔をもちながら、現在は官公庁、大手企業を中心に禅を活かした経営・組織開発コンサルティングやリーダーシップ研修、講演、坐禅指導等を行う。
著書に『仕事に活きる禅の言葉(サンマーク出版)』『翌日の仕事に差がつく おやすみ前の5分禅(天夢人)』がある。
一人一人が自分の夢や使命に気づき、充実したキャリアやライフを送れるようサポートすることが使命。座右の銘は一日一生。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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