TOP 禅の教えに学ぶ経営道+リーダー学 今、世界のエグゼクティブたちはなぜ、禅に傾倒するのか。(1/5)

2018/03/05

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禅の教えに学ぶ経営道+リーダー学

第1回

今、世界のエグゼクティブたちはなぜ、禅に傾倒するのか。(1/5)

  • スペシャル対談
  • 経営
井上 そういえば、映画『スター・ウォーズ』と禅の関連性みたいなことも、以前から話題になっていますよね。メインキャスト(マスター・ヨーダ)の台詞「Don’t think. Feel. 」などは、僕も、そうそう、と思いながら観ていました。もっとも、それ以前に、ブルース・リーの映画にも同じ名台詞があるそうですから、やはり東洋的な感覚なんでしょうね。スター・ウォーズと禅の関係については、『スター・ウォーズ 禅の教え エピソード4・5・6』(枡野俊明著、KADOKAWA)という本にも詳しく書かれています。

 

島津 禅とスター・ウォーズとの関連性というのは、面白いですね。今、なぜ禅なのか? ということをもう一つ、時代の流れから語ると、文明というのは必ず栄枯盛衰、浮き沈みがありますよね。今は、西洋文明というか、なにもかもアメリカへの一極集中が行き過ぎてしまった。資本主義も含めて、それらの限界みたいなものが見えてきたことで、世界が東洋的なものに少しずつシフトしていっていると思います。それが、もう少し科学的なアプローチをということで、「マインドフルネス」になったりしている。

 

井上 特に、ここ5年くらいは、IT系のグローバル企業が研修などに禅を取り入れているという話をよく耳にします。グーグルさんもそうですが、彼らはどういう感覚で禅を取り入れているんでしょうね。座禅をすると集中力や想像力が高まるという話はよく聞きますが、救われるといった感じもあるでしょうか。

 

島津 彼らは、ある意味で自然的・人間的なところから一番遠い環境で仕事をしていると僕は思っているんですね。パソコンにずっと向き合っていて、生身のコミュニケーションではなく、よりデジタルに偏ったコミュニケーションをしているわけです。しかし、実際のマネジメントにおいては、仕組みだけでは人は動きません。彼らは常にそういう悩みを抱えています。あとは、それこそメンタルの問題もあるでしょう。
私のところに研修の相談に来るのも、やはりIT系企業が多いです。先日、ある会社にお邪魔したら、社員さんがみんな青白い顔をしている。「なぜお問い合わせいただいたんですか?」と尋ねると、「なんか、禅が必要な気がする」とおっしゃるんですね。直感で感じたのでしょう。打ち合わせの中で、実際に座禅を組んだり、お話をさせていただいたら、それだけで「癒されました」と。生身の人間、もっと言うと、より野性的な、動物的な自然界から一番遠いところの仕事をしているからこそ、禅の必要性みたいなことを感じていたんじゃないかと思いますね。やはり、人間は人間と話し、動物と話さないと、心身ともに痛みますよね。

 

井上 今はどこに行ってもそういうような環境に置かれるようになってしまっているので、人工的なスピードに巻き込まれて……という原因もあるんでしょうね。
島津 情報量があまりにも多くなっていて、処理速度が確実に限界を超えてきているのだと思います。働き方に関しても、土日や夜でも、MessengerやLINEなどでお客さんから連絡が来ることもある。そうなると、オンとオフが上手くコントロールできなくなって病んでしまいますよね。鬱が増えているのは、欧米も同じようです。先日、イギリスからいらした方も、最初は非常に険しく疲れた顔をされていました。話を聞いてみると、仕事の流れがとても速くなっていて、「期限、期限、期限」と時間に追われている。すごくストレスフルな環境で仕事をしているのです。しかし、ここ(=株式会社シマーズのオフィス)で30分間座禅をしたら、帰るときにはとても穏やかな顔になって、「自分にはこういう時間が必要だったんですね」みたいな感想を話されていました。井上さんがおっしゃったように、科学技術の進歩が速すぎて、そのテンポに人間がついていけなくなっているということはあるでしょうね。

 

(構成・文/津田秀晴)

 

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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  • 島津 清彦氏

    島津 清彦氏

    株式会社シマーズ 代表取締役

    元スターツピタットハウス代表取締役。元ソニー不動産取締役。
    東日本大震災での被災を機に上場企業の社長というキャリアを捨て、2012年、経営コンサルタントとして独立起業。その後、多くの世界一流リーダーが禅に辿り着くことを知り、自らも出家得度し仏門入り。
    経営者と禅僧という二つの顔をもちながら、現在は官公庁、大手企業を中心に禅を活かした経営・組織開発コンサルティングやリーダーシップ研修、講演、坐禅指導等を行う。
    著書に『仕事に活きる禅の言葉(サンマーク出版)』『翌日の仕事に差がつく おやすみ前の5分禅(天夢人)』がある。
    一人一人が自分の夢や使命に気づき、充実したキャリアやライフを送れるようサポートすることが使命。座右の銘は一日一生。

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