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VOL.5 「社会貢献」――優しさと余裕も身に付けて、自らが従業員の手本になる。(5/5)

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井上 著書の中では、「パンダやヤマアラシのように群生しない生き物は愛の欲求をほとんど持っていない……単独で生き、単独で生活し、愛を持たない、そのような存在になっていくことが、人間の次なる進化なのでしょうか?」とお書きになっていましたね。

晴香 そうは思いたくはないですよね。人間の不公平回避というものは、「相手がずるい。自分だけは損しないぞ」だけではなくて、自分だけが得したときにも「なんか申し訳ないな」と感じることです。相手を思いやり、分かち合うような、幸せのその先にある「相手も幸せになってくれたから私も幸せ」という高いレベルの幸福感みたいなところに持っていけるものだと思うんです。

また、本にも少し書いたんですが、自然界には、群れの中で弱い者は切り捨てて種族を守るという厳しいルールがあります。しかし、人間はそれをやめて、できるだけ弱者を救済していくという道を選んだわけですね。自然界では生きていくのが難しい状況の命であってもなんとか助けていくという意思のもと、これまで医療や福祉を発展させてきたわけです。これは、医療の発展によって、自然淘汰にストップをかけることでもあるわけです。人間を自然界に生きる一生物として考えたときに、これはとても重要な意味を持つと考えています。

医療で弱者を守ると決めたのであれば、守り続ける福祉や、福祉教育というものがすごく大事だと私は思っています。でも、今の学生さんたち、中学生、高校生、大学生であっても、「勉強しなさい」と毎日言われる家庭はあっても、「弱い人たちを助けなさい」と毎日言われる家庭というのは、あまりないようです。優秀な人たちに優秀な教育をするのであれば、優秀な福祉教育について考えていくことも大事だと思います。強くなることを目指していくと同時に、優しさという部分も強化していってほしい。まもなく東京オリンピックもありますが、このような一大イベントは、大きなメタファーになる可能性があります。全ての人が勝つことはできなくても、全ての人が幸せになることはできますからね。
「自分だけが成績が良ければいい」という子供を育ててしまったら、それは全部自分たちに返ってきます。できれば幼いうちから「他人に優しく」「手を差し伸べ合う美徳」といったことも、日常的に話題に上がるといいですよね。社会に出てからでも、それは経営者の方のあり方を見ることで学べると思います。

だから、何のために働くのか? と考えたときに、いろんな理由があると思いますが、「自分が幸せになるために、そして、誰かを幸せにすることができるかもしれない」ということに気づけると、働く喜びなども見えてくると思うんです。

井上 まさしくそうですね。経営者の方にはどうでしょう?

晴香 経営者の方は利潤の追求という大きな目標があるわけですから、経済力をどんどん付けて、社内のコミュニケーションも良くして、従業員の幸福感や満足感を引き上げていく中で、福祉に対する興味関心も持ち続けていただければと思っています。例えば、どこかへ寄付するにしても、従業員と一緒にそこに寄付をする意味をもう一度考えてみる時間をもつなど、強さだけではなく、優しさや余裕を持った経営者って、素敵ですよね。
先ほど働く意味のところで「自分も、誰かも幸せにする」という話をしましたが、経営者の方は、たくさんの人を束ねていらっしゃって、関連会社などを含めるとものすごい数のコミュニティを持っていらっしゃるわけですよね。このような声も広げていっていただけたらと期待しています。

井上 今日は、経営者としていろいろ気づきのある話をありがとうございました。

晴香 こちらこそ、ありがとうございました。

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*引用・参考文献「人生には、こうして奇跡が起きる 誰もがもっている2つの力の使い方」(2017,晴香葉子著,青春出版社)pp185-192.

(構成・文/津田秀晴)

晴香葉子
(はるかようこ)
作家・心理学者・心理コンサルタント

東京都出身。文学修士(コミュニケーション学)。学芸員資格取得。博士後期課程在籍中。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら一人一人の幸せにつながり、広がる、心理学について、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、監修などの活動を続けている。所属学会:日本心理学会、日本社会心理学会、日本産業ストレス学会他。日本心理学諸学会連合心理学検定1級(偏差値73獲得)。メディアでの心理解説実績、著書多数。海外でも4冊出版。テレビ朝日『ニュースEX・auヘッドライン』にて悩み相談記事連載中。新刊『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)10月14日発売。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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