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VOL.4 「自分のWill」を膨張させ、それを「会社のShould」にしてしまえ!(4/5)

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井上 昨年、お付き合いが深い経営者の方々をお招きしてパーティをした際に、夏まゆみさんという振付師の方に講演をしてもらいました。夏さんは、モーニング娘。やAKB48などの振り付けやプロデュースをされている方なんですが、その中で、リーダーシップに関してすごくいい話をしてくださったんですね。
個人的に印象深かった話をかいつまんでご紹介すると、例えば、AKB48では、センターで歌う子がいる一方で、端っこにいる子がいるわけです。この子たちをただ放っておくと、「どうせ隅だから」と気を抜くし、モチベーションも上がらない。人間ですからね。しかし、夏さんは、そうした子のところに行って、こんな感じのことを言うのだそうです。「この場所からお客さんを見てごらん。あなたの近くにもたくさんのお客さんがいるでしょ。その人たちの心をつかみなさい。あなたは、目の前のお客さんをつかむリーダーなんだよ。そして、また別のところに行くと、またそこにも目の前にいるお客さんたちをつかめば、あなたの周りには、あなたを支援してくれる人がどんどん増えて行く」と。つまり、センターならセンターの、5番手なら5番手の意味をちゃんと考えて、自分の立場からのリーダーシップを発揮するということです。

鎌田 まさにそうですね。知命社中で僕たちが伝えたいのも、そうした話です。社員のモチベーションを上げることに苦労されている経営者の方々には、すごく刺さる話だと思います。
今の話は、本人のwillと、与えられたShouldとの関係だと思いますが、知命社中でも似た話がありました。プログラムでは、私からある「お題」について、A案とB案のふたつ考えを示し、どちらの立場に近いかを決めてもらい、参加者同士で対話をする事があるんですが、先日のお題は、こんな内容でした。
「私たちは今、長いビジネスキャリアを経て大きな節目にいる。それは人生最後の大仕事をするための節目かもしれないし、いやいや、これからが本番だという節目かもしれないし、いずれにせよ節目にいる。あなたも、今その節目に立っていると思うが、これからをどうしたいか? Aという選択は、自分の残された人生を自分の好きなように使う。自分が本当にやりたいことでドライブしていきたいというもの。一方、Bという選択は、自分の好きなことをやりたいというのは否定しないが、誰かのために自分が存在するし、これまで世話になった先達に対する恩義がある。今度は世話をもらう側から渡す側にならなければいけない。期待されること、求められること、乞われること、これにしっかり応えていきたい、というもの。」こんな問いで議論してもらったんです。

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井上
 その問いは、結構考えさせられますね。

鎌田 参加者が選んだ割合は、A・B半々くらいだったんですが、参加者同士の立場の異なる対話を終えた後、ある人がこんな発言をされました。
「結局、一緒になりましたね。つまり、自分の中では、パーソナルな願望ということと、この会社で成さんとする使命というのが今完全に同期しました」と。

井上 全てが接合しないかもしれませんが、僕にもその感覚がすごくありますね。結構両立し得るというか、そこに自分なりの存在感というのがあるなと。

鎌田 もっと言うと、それはまさに「ShouldとWillの共通点を増やす」ということですよね。共通性を増やすという話のときに、日本人は奥ゆかしくて謙虚で、「和を以て貴しとなす」というところがあるので、遠慮がちになると思うんです。そこで、僕が最近よく言っているのが、「皆さんすごく大人で、分別盛りですよね。でも、この分別ってのは実は曲者ですよ」と。分別があるというのは、結局、落としどころを探っているだけという面もあります。ある意味で、もっとわがままになっていい。自分が考えるWillを膨張させつつ、それを会社のShouldにしてしまえばいい。いわば、「精神的に会社を乗っ取る」ということです。そういう発想で、「人生は自分がハンドルを握る感じでやっていこうよ」というのが大きなメッセージなんです。
ただし、それは単に勝手気ままでいいとか、自分本位の気持ちのいいことやりましょうということでもない。また、色々制約はあるけど、ガッツを持って頑張れとエールということでもないです。なぜなら、本当にそうしようと思ったら、裏側で相当勉強しなければできない話です。自分のWILLを、組織のShouldに昇華するに足るだけ磨き込まなければ、無理ですから。我々が知命社中でお伝えしているのも、「相当な知識と見識を持って自分で考え抜かないと、そしてそれが相手に届くような形で伝えることができることが条件です」と。それもセットで考えてもらうことなんです。井上さんがエグゼクティブサーチでされている時に、たぶん同じ感覚があるんじゃないでしょうか。

井上 僕らは、候補の方がそういうものを持っているかどうかという、現状の立ち位置を見ていることが多いですね。ただ、知命社中のような形のもので、全員とまでは言いませんが多くの方のリーダーがそこに気づくことのできる道筋はあると思うんですよね。そういう機会は増やしたいですよね。

鎌田 楽観主義に聞こえるかも知れないですが、僕は部長クラスにもなれば、ほとんどの方は自分のwant(成し遂げたいことへの意思や願望)は持っていると思っています。「そもそも何を初志として考えていた
のか?」ということを日々の多忙さの中で忘れかけていたり、自分で勝手に可能性の扉を閉じてしまっている場合もありますが。だから、「横壁を壊し、上蓋を開けてみましょうよ」と言ってさしあげるだけのことではないか、と。

井上 「自分から開けないと開かない」と言いますよね。他人が外から開けることはできない。

鎌田 そうなんですよね。僕も、本人にしかそのことができないし、本人にはそのことができると、心から信じられるようになりました。

鎌田 英治
(かまだ・えいじ)
グロービス・コーポレート・エデュケーション
マネジング・ディレクター
知命社中 代表

北海道大学経済学部卒業。コロンビア大学CSEP(Columbia Senior Executive Program)修了。日本長期信用銀行から1999年グロービスに転ずる。長銀では法人営業(成長支援および構造改革支援)、システム企画部(全社業務プロセスの再構築)、人事部などを経て、長銀信託銀行の営業部長としてマネジメント全般を担う。グロービスでは、人事責任者(マネジング・ディレクター)、名古屋オフィス代表、企業研修部門カンパニー・プレジデント 、グループ経営管理本部長、Chief Leadership Officer(CLO)などを経て、現在は株式会社グロービス マネジングディレクター 兼 知命社中 代表。講師としては、グロービス経営大学院および顧客企業向け研修にてリーダーシップのクラスを担当する。著書に『自問力のリーダーシップ』(ダイヤモンド社)がある。経済同友会会員。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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