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VOL.4 日米で異なる「経営幹部が就任後に行うべきこと」を知っておくことの重要性。(4/5)

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井上 昨年御社で出された『マネジメント人材育成ハンドブック』を興味深く拝見したのですが、次世代のリーダーやマネジャーを育成するために必要な6つのテーマを、ストーリー仕立ての記事やインタビュー調査、最新研究の紹介などで解説してあり、マネジメントに当たる方々にとって非常に良い教材ですね。今回はそのあたりからお伺いします。
エグゼクティブサーチを行っている僕の立場からは、「経営幹部が就任後に行うべきこと」に関する調査結果と研究案内はとても参考になりました。未知の組織を任されて苦労することが多い経営幹部の方にとっては、目からウロコの内容ではないでしょうか。

古野 要するに、経営幹部には就任後90日間でやらなければならないことがある、ということですが、こういう書籍はアメリカの方が多くて、日本にはあまりありません。今回、僕たちの調査でわかったのは、実は日本とアメリカは違うということです。
リーダーとして就任後は、どのような戦略・方針で行くのかを作ると同時に、「この人って結構イケるね」というように、部下から「いい人」だと思われなければなりません。戦略の打ち出しと信頼の蓄積の両方をやらないといけないわけですが、アメリカの本を読むと、どちらかというと戦略をボンボンボンと打ち出すみたいなことが書いてあります。

しかし、日本の場合、成功している経営幹部は、そうした「有能性」よりも、まずどうやって信頼を獲得していくかという「同調性」に重きを置いた行動をとっていました。打つ手は結構わかっている。わかっているけれど、そこで自分が誇示するように上から言った瞬間に、部下たちは冷めて逃げていく。それを自分で言うのではなく、みんなに言わせるなど、バラエティの持たせ方をわかっている人は上手く成功しています。

また、成功している人は、まず部下の一人ひとりにインタビューを行って、入社動機や存在理由、あるいは、企業や組織の歴史・文化などを尋ねていました。そうして同調性を示しつつ、「有能性」のベースとなる情報を手に入れていたわけです。これは、僕が経営幹部にインタビューしていても、非常に感心した部分でしたね。アメリカの本をうかつに真似したら失敗すると思いました。
ただし、非常事態に陥っている経営再建の場合は例外で、この調査でインタビューした方も、「同調性」にかまわず改革に着手していました。

井上 特に落下傘で入っていく形は、日本では上手くいかないことが少なくありませんね。

古野 この冊子では、「上手くいかないことがわかっていないとダメですよ」ということを言っています。ところで、組織を改革していくときには、やはりコンサルタントの経験は大きいと思いますね。例えば、戦略の見立てを作る力が高いことや、プロジェクトマネジメントが上手だということ、そして、インタビューをする技術も高い。そうしたことを全部ひっくるめて考えるとコンサルの技術は役に立ちます。ただし、それで上手くいくと思うのは勘違いで、どうやって人を上手く乗せながら動かしていくか? というところが長けてないと、逆に失敗してしまうという話です。

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井上 もう一つ、「経営者への道(卓越した経営者の学びのプロセス研究)」は実は当社で取材対象者をコーディネートさせていただいた企画ですが。

古野 複数の会社で業績をあげたプロ経営者に聞いてみると、彼らは早い段階で経営者になるつもりがあり、インタビューした人の半数(11名中5名)は新卒入社の時点で意識していました。一方、大企業の経営者に尋ねてみると、あまりそういうことはありませんでした。ただし、そうはいっても彼・彼女らは自分に対する負荷の掛け方が普通の社員とは全く違いました。普通「100%でいいや」と思うところで、150%くらいのところに目標を置いて、常に高い出力レベルを自分のスタンダードにしていました。また、自分がメンバーだったときには、課長や部長くらいの一段階上の目線で「自分はどうすべきか?」を常に考えて動いている人がとても多かった印象があります。
さらに、その鍛錬の仕方に関して、プロ経営者と大企業経営者を比べてみると、プロ経営者の方は、どちらかというと「対課題=どのような戦略を打つか」という面で長けている人が多く、一方の大企業経営者では「対ピープル=対人スキル」に長けている人が多かった。その良し悪しは別として、対人スキルを磨くにはとても時間がかかりますし、PDCAのフィードバックをもらいながら学ぶものだということを意識してきたからでしょう。
そのほか、身体訓練や体調管理などに気を配っていることや、定期的な内省によって自己理解を深め、経営観などの持論を作っていたことも、成功した経営者の方々に共通していました。

井上 面白いですよね。『マネジメント人材育成ハンドブック』では、このほかに、「マネジャーになる」、「成果をあげるミドル・マネジャーとは」、「女性マネジャーの特徴」などについても解説されています。当事者の方はぜひご一読されることをお勧めします。

古野 庸一
(ふるの・よういち)
1987年東京大学工学部卒業後、株式会社リクルート入社。
南カリフォルニア大学でMBA取得。キャリア支援に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、リーダーシップ開発、キャリア開発に関する研究に従事。2009年より現職。著書は『いい会社とは何か』(2010年 講談社現代新書)、『日本型リーダーの研究』(2008年 日経ビジネス人文庫)、『リーダーになる極意』(2005年 PHP研究所)、訳書に『ハイフライヤー 次世代リーダーの育成法』(2002年 プレジデント社)など。論文に「『一皮むける経験』とリーダーシップ開発」(2001年『一橋ビジネスレビュー』)、「プロ経営者になるための学びのプロセス」など。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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