VOL.2 経営者になるには、年代・道筋によってそれぞれ異なる必要な準備がある。
以前、株式会社グロービスの堀義人代表が、「60代半ばに人生の絶頂期が来るように過ごしている」といった趣旨の話をされているのを聞いて大いに納得したことがあるのですが、たしかに人生100年ともなれば、経済的な意味でも、また生きがいという意味でも、「人生のピークをどこに持っていくか?」という視点はとても大事だと思います。
例えば、外資系企業では、力のある人は大手でも30代で部長職位に昇進することも少なくありません。そこで年収も上がり、その前提でプロモーション・転職を希望し、かなり良い条件のポストに就くのはいいのですが、下から同じような人が追い掛けてくるので、40代後半ぐらいになるととても辛いことになります。その場合、“上を目指す”とすれば、経営者になる以外、もうポストがない。逆にその時点でリストラされてしまう可能性が年々高まり、仮にそこで「これからは腰を落ち着けてやっていきたい」と日本企業に転職しようとしても、そうしたキャリアの方は、年齢や年収、忠誠心などの面から日系企業からは敬遠されがちです。60歳まで働くとしてもまだ十数年あるのに、早めに“上がり”に行き着いてしまうわけです。
それは社長になっても同じです。私は社長になるチャンスがあるなら、ぜひなった方がいいと思いますが、雇われ社長として10年間やらせてくれるケースは多くありません。大手では5年も任せてもらえれば、「ちゃんとやらせてもらえましたね」と言われるほどサラリーマン社長人生というのは、実は短い。しかも、在任中に確たる実績を残した方でも、他の会社にそれなりのポジションで迎えられる案件が多くあるわけではありません。
そうした事態も見越して生活していればいいのですが、たいていは年収に見合ったゴージャスな暮らしをしているために、経済的に行き詰まる人も出てきます。仮に十分な資産を築き、経済的な不安が全くないとしても、ただ遊んでいるばかりで幸せな人は少ないでしょう。社会的なポジションや役割を早々に失って、その後の人生を満たされないまま過ごしている方もいます。
今後この連載で、そういったことも含めて、さまざまな年代・ルート・ポジションにある(あった)方の実例、もしくは、経営者の方のインタビューも交えながら、人生100年時代の経営者デビューについて、多面的にご紹介していきたいと思います。
日本には、社長候補も含めたリーダー人材が絶対的に不足している――。これは私がこの仕事を始めてから一貫して抱いている危機感です。
リーダー候補たる皆さんも、ぜひこれを機にリーダー・経営者をめざしてください。年齢に関係なく、今の環境で爪を研ぎながら、何度もチャンスをつかんでいってほしいと思います。
(構成・文/津田秀晴)
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