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VOL.1 推敲なしに原稿を発表するのはプロの書き手でも怖い。人前で話すという行為も、実は同じこと。(1/5)

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井上 西任さんには、僕が開業した頃にレッスンしていただいたことがありましたね。僕は、あれで話し方が変わりました。例えば、それまでは司会をするときなどに、「~と思います」を連発していました。「今からセミナーを始めたいと思います」といった感じですが、そのときに西任さんから、「『始めます』でいいのでは?」と言われて自分の癖に気がついた。割とまどろっこしい話し方なんですよね。

西任 まどろっこしさで言うと、「~と思います」だとオブラートが1枚くらいですが、「~~しようかな、というふうに思います」と言うと3枚かかりますよね。断言を避けるというか、相手に圧迫感を与えないために、その言葉を意識的に選択するのは素敵なことですが、無意識だとすると、その話し方を繰り返しているうちに、どんなときも語尾にオブラートを重ねてしゃべるパターンが身に付いてしまいます。そうすると、その人の話し方は、何となく責任を回避しようとしているような印象を与えてしまう。
こうした、各人がそれぞれ生きてきたコミュニケーション環境で身に付けた癖――、これを「ノイズ(雑音)」と言ったりしますが――、それが絶対にダメということではありません。井上さんには当時、「必要に応じて話し方を選べるような意識状態になっていきませんか?」というお話をさせていただきましたよね。

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井上 自分で言うのも何ですが、あれ以降、僕のパブリックな場での話し方は100倍くらい(笑)端的でわかりやすくなったと思います。
スピーチをするときなどに、いちいち間を取るというか、まどろっこしい話し口調がリズムになっている人もいますよね。例えば、「~である……、というわけで……、ございますが……」みたいに。

西任 そうですね。それは、ご自身の中で「間(ま)」を取っているというより、その「間」と思考回路が全てつながっているんですね。だから、その癖を手放すと、しゃべれなくなってしまう。癖にもいろいろあって、例えば、「(これから)~~についてお話しします」と言うのもそうです。別に不自然ではないと思われるかもしれませんが、「~~についてお話しします」と言ってから語ると、他人を巻き込みにくいんですね。何かを報告をするときにはそれでいいんです。その方がわかりやすい。でも、スピーチするときには避けた方がいい。例えば、もし小説や物語の中で、「それでは続いて二人の出会いについて話します」、「出会いに続いては二人のその後の展開について話します」とやると、聞いている側の心が途切れてしまいますよね。人の心は、「この後どうなるんだろう?それで? それで?」と線でつながっていくからです。一方で、報告調の話し方というのは、その都度、ブツっと切れる箇条書き調の話し方になるので、聞いている人は巻き込まれにくいんです。
つまり、すべては目的によります。経営者に限らず、表現というものを目的別に選択できる、要するに、表現方法のバラエティを自分の中で持っていられたら、って思うんです。例えば、報告のときにはわかりやすく端的に話すこともできるし、他人を巻き込みたいときには、「それ、どういうことだろう?」というわからない部分(空白)を敢えて作りながら人を巻き込んで話していくこともできる。今の自分の表現の方法を否定するのではなく、広げて、使い分けていけたらいいですね、というご提案をしています。

井上 たしかに、話が上手い人はそれができますね。集中力のない、ざわざわした会場を見て、わざとぼそぼそと、妙に気になるようなエピソードから話し始めたり……。

西任 大きい声で話せば聞いてもらえるわけじゃないんですよね。むしろ、ぼそぼそと話しているんだけど、「なんだろう?」と聞いている人が感じる――それは物語ですよね。例えば、「ある女性とこの前ね……」と言われたら、この前何があったの?どんな女性? と、自分の頭の中にどんどん空白ができていきます。だから巻き込まれていってしまう。でも、「この前、素敵な女性と非常に良い出会いがありましたので、今からその話をします」と言われたら、あまり面白くないですよね。なんか「よかったね……」みたいな感じで(笑)。
ですから、スピーチとプレゼンは違うんです。あるいは、プレゼンテーションの中でも、端的に説明する場所と、人の心を動かす部分では、話し方が違う。これは、「左脳的な話し方」と「右脳的な話し方」という言い方もできますが、その両方ができたら素敵ですね。

井上 もちろん天性のものもあると思いますが、フォーマット的にそういうことが上手くなる人は、落語家やお笑いタレントのように、瞬間的に場の空気をつかんでいく技術を毎回求められるからでしょうね。

西任暁子
(にしと・あきこ)
U.B.U.株式会社 代表

大阪生まれ、福岡育ち。アメリカへ高校留学した後、慶應義塾大学総合政策学部に入学。
在学中からFMラジオのDJとして第一線で活躍。国内外の著名人5000人から本音を引き出すインタビューを経験するなかで、話し手・聞き手両方の立場から「わかりやすく伝える方法」について探求を重ねてきた。

独立後は「話し方の学校」を開校し、2年半に渡って学長として指導。
現在は、スピーチやファシリテーション、コミュニケーションを軸に企業のリーダー育成に従事するほか、クリエイティブ・リーダーシップ養成講座を開講。人間の創造性を最大限に引き出すメソッドが各方面から高い評価を得ている。
MCを務めるポッドキャストプログラム「マンツーマン英会話Gaba Gstyle English シチュエーション別英会話」は、毎月700万ダウンロードを超え、「iTunes Rewindオールタイム ベストビデオ Podcast」を3年連続受賞。
また、歌手としても活動し、「言葉」と「声」の表現力を磨き続けている。
著書に『「ひらがな」で話す技術』(サンマーク出版)、『話すより10倍ラク!聞く会話術』(ディスカヴァー)、『本音に気づく会話術』(ポプラ社)
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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