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特集記事・コラム

VOL.1 相互補完的な「モザイク型」の働き方へ。―多様な人が活躍できる「業務改革」「仕事環境改革」―(1/5)

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井上 総論的にはなりますが、まずは、豊田さんが最近感じていらっしゃることからお伺いできればと思います。

豊田 われわれの組織(リクルートワークス研究所)は、大企業を中心とした日本の主要企業の人事の方々との対話を重視してきました。これまで日本の社会は、大企業が何らかの形でリードしてきましたし、変革の先兵となってきた――というスタンスで取り組んできたわけです。組織としては今もスタンスは変わらないのですが、ただ個人的には、大企業にはもう変革の力はないのではないか? と、ここ何年も前からひしひしと感じ始めています。

井上 確かに、戦後から高度経済成長期を経て「失われた10年」といった言葉が定着する頃あたりまでは、まず大企業が何かを取り入れ、変革の先鞭を付けたところからテーマが立ち、社会が動くというところがあったと思います。ところが、最近は大手企業というと、メディアも悪い気がするのですが、どちらかと言えばいつも謝っていたり、不祥事を報道されたり、といった印象が強い。逆に、新しいものは、ベンチャーや新しい領域の人たちの話になっているところがありますよね。

豊田 正直、それは感じますね。ベンチャー企業・新興企業は、いつの時代もあったわけですが、それは社会的に言うと、「アナザーサイドに面白いものができている。これはこれでいいよね」という感覚だったと思います。そして、「やっぱりメインストリームが世の中をつくっているし、大企業が世の中を変えていく」あるいは、「大企業がイニシアティブをとらなければ……」という感覚は失われた10年の間にもあったし、われわれも議論していました。ところが、最近はベンチャー企業や新興企業が、ある意味でメインストリームになっていくような感覚を持っています。

井上 もちろん、大企業さんも当然チャレンジは続けていると思いますが、それが「未来に向かって行くぞ!」というよりは、何か「苦しみの中での英断」みたいな取り上げ方をされることが多い気がします。トヨタ自動車のようなナンバーワン企業でさえ、何か辛そうなニュースとして伝わってくるのが、ある意味、今の日本を象徴しているような気がしますね。
さて、それはともかくとして、今回は豊田さんからあらかじめ5つのテーマをいただいています。今の話から、半ば強引に(笑)第1のテーマ《多様な人が活躍できる「業務改革」「仕事環境改革」》に入っていきたいと思います。

豊田 個々の企業というより、マクロ文脈として、「人手不足」ということがありますよね。でも、人手不足と言いながら、実は働きたいけれど働けていない人はたくさんいる。もうあきらめて労働市場に出てきていない人たちです。「失業率の数字より実は大きなボリュームゾーンがある」というデータがあって、その状態は非常に望ましくない。
本当は、企業側がその人の持ついろいろな能力や知識といったものをもっと活用するための「業務改革」「仕事環境改革」に創意工夫をこらしていかないといけなくて、そうでないと、日本の今のポテンシャルは、どんどんシュリンクしていってしまうと思います。「リモートワーク」とか、就業時間の問題といった施策も大切だとは思いますが、それは手段のワンオブゼムに過ぎません。以前、当研究所では、『2025年 働くを再発明する時代がやってくる』というレポート出しているんですが、この中でも、働く人を社会的に増やしていかないと日本はジリ貧になってしまう、という話をしています。

井上 とても興味深く拝読しました。同レポートにはこうありますね。「これまでの人材の多様化は、雇用形態の区別など別制度下におくことで実現されてきた。しかし、2025年にかけては、多様な人材を職場レベルでインクルージョン(包摂)していかなければならない」――。いわゆる「モザイク型」の働き方ということですが。

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豊田 リクルートワークス研究所ができたのが1999年。その時から、われわれは「モザイク型社会」の実現を標榜していました。当時は、「多様な就業形態の人たちをもっと活かしていきたい。正社員時代は終わる」といった言い方をしていたんですが、今は、就業形態もそうですが、年齢ゾーンもあるかもしれないし、制約もそうだし、能力も嗜好もそうですが、「そうした多様な人たちをどうやって活かすか? どうやって多くの人々を働けるようにするか? と考えていった時に、フルタイムどこでも働く正社員中心のモデルはありえない。仕事そのものを細分化、再編し、多様な働き方を可能にしていく」という話もしています。
リクルートグループに「リクルートジョブズ」という、アルバイト、パート領域の人材採用を支援している会社があります。そこの実態を見ると、企業は求人をしてもなかなか人が採れないわけです。ではどうするかというと、《毎日8時間労働 × 何人》と言う仕事ではなくて、この仕事をもっと違う形に細分化して、ある部分を主婦に託し、ある部分をシニアにやってもらうといった形が考えられます。そんな方法を少しずつ提案して、今までは労働市場に出てきていなかった人に働く機会を提供するということを事業でもしています。

井上 必然から生まれるところというのはやっぱりあると思いますし、それが健康的な気がするのですが、理に適う人が採り切れないとすると、「時間限定でもいいよ」とか、女性社員の中で結婚・出産されて退職された人をどう戻していくかということにもなっていきますね。

豊田義博
(とよだ・よしひろ)
リクルートワークス研究所 主幹研究員

1983年東京大学理学部卒業後リクルート入社。就職ジャーナル、リクルートブック、Worksの編集長を経て、現在は研究員として、20代の就業実態・キャリア観・仕事観、新卒採用・就活、大学時代の経験・学習などの調査研究に携わる。著書に『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』(PHPビジネス新書)、『若手社員が育たない。』『就活エリートの迷走』(以上ちくま新書)、『「上司」不要論。』(東洋経済新報社)、『新卒無業。』(共著 東洋経済新報社)などがある。
井上和幸
(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
早稲田大学卒業後、リクルート入社。コンサルティング会社取締役、リクルートエグゼクティブエージェントマネージングディレクター等を歴任。2010年経営者JPを設立し、現職。

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