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ITmediaエグゼクティブ【経営者.jp企画提供】連載
ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術!
VOL.105 山本真司さん  2012年01月26日

「なぜ、コンサルティング業が存在しているのか?」――社内コンサルタント的な働き方のススメ

コンサルティング会社は不思議な業態だ。クライアントが自分でできることを、わざわざお金を払って外部に依頼する。その存在理由とは。

昨年12月に、「1秒でわかる、コンサルティング業界ハンドブック」(東洋経済新報社)という本を、かつてA.Tカーニーで一緒に働いた安藤佳則氏と共著で出版した。外資系経営戦略コンサルティング業界に20年以上身をおいてきたが、一度、自分の世界を客観視してみたかった。本書は、そうした機会を提供してくれた。「なぜ、コンサルティング業は存在しているのか?」という問に、答えを出したかった。

「時間を買う」

コンサルティング会社とは、不思議な業態だ、クライアントが自分でもできることを、わざわざお金を払って外部に依頼するわけだ。しかも、経営戦略立案というコア機能をアウトソースするというのは、変なことかもしれない。

どうして、コンサルタントを雇うのか? その答えの一つが、「時間を買う」効果であるといわれることが多い。その意味合いは経営課題を分析するためのコンセプトや、フレームワークをクライアント以上によく知り、かつそれらの実際の業務への適用経験が多いことによる経験効果により、早く、的確に答えにたどり着けるという期待である。

実際大手コンサルティング各社は、成長と拡大のなか業種、機能、地域でのコンサルティング経験を蓄積し、知財のスケールで優位性を構築している。優秀な若者を採用し、トレーニングに投資をし、こうした知財を世界的に共有することで、クライアントに、より効率の高い技法(ツール)の使い手としての付加価値を提供する。

1960年~1990年代にかけて、大手コンサルティング会社を中心に興ったコンセプト開発競争の時代は、もうすでに過去のものとなってしまった。それはクライアントが新奇な発想や手法以上に、コンサルティングに業績向上への直接的貢献を求めだしたためでもある。したがって、1990年代の「デコンストラクション」のコンセプト開発以降、世の注目を集めたコンセプトは登場していないともいわれている。それでは、知財のスケールでの優位性というツールでの付加価値は、より小さくなっていく運命にあるのではなかろうか?

アメリカのコンサルティング業界は、ビジネス・スクールの成長と軌を一にした。いま、わが国では少し形を変えて社内教育への大きな投資、社会人向けのビジネス・スクールの隆盛などにより、経営戦略コンセプトの流通度合いは、一時代前とは比べものにならないほどに、広がっている。ますます、コンサルティング業の存在価値に対してマイナスの材料が増えることになる。逆に言うと、日本の会社の幹部、中堅社員そのものが自社のコンサルタントとして各種のコンサルティング分析ツールを駆使し、経営改革をリードしていくことが主流の時代になってもおかしくない。欧米でも自社グループ内に、コンサルティング部門を作る動きは大手企業で盛んである。

 

スタイルによる差別化

それでは、わが国の経営コンサルティング業界が下火になっているかというと、そうではない。むしろ経営戦略コンサルティングのアウトプット、成果に対する知見が世に広がるに連れて、わが国でもコンサルティング業界は成長を遂げている。それはなぜか?

ひとつには、グローバリゼーションという世界的に大きな波が、その成長の原動力となった。知らない国、知らない市場への展開は、良き水先案内人としての知見にあふれる各国に事務所を展開する大手コンサルティング会社にビジネスチャンスを創出した。

しかし、それだけではない。著者は、大手、一流コンサルティング各社に共通に観察されるコンサルタントとして働くスタイル、すなわち、強固な行動規範が、大きな業界の存立理由だと考えている。マッキンゼー、BCG、ベインを始めとする大手コンサルティング各社で働くと痛感するのは、各社の定める行動規範の貫徹の度合いの強さである。文化を作る以上に、日常の空気を作っていると表現したほうが当たっている。また、各社で行動規範の目指すゴール、方向性に大きな違いは無いものの、各社が信じる独自性へのこだわりは強く、結果としてずいぶんと違うカルチャーを作ることになっているように感じる。

行動規範。それは、クライアントの組織が自然体では、どうしても陥りがちになる組織的な問題を、外部のコンサルタントの立場から回避する役割を果たす。もって、クライアントにとっては、効率的に組織問題から自由な回答を得ることができる。

 

顧客の視点、客観性、ファクト主義、因果関係、クライアント企業の利益

そうした、各社の行動規範の代表が、「顧客の視点」、「客観性」であろう。これは、どうしても組織が大きくなると陥りがちになる症状である「内向き志向」への意識的アンチテーゼとして機能する。また「ファクト主義」、「因果関係」という分析の基本的スタイルも、特定の人や組織の声の大きさや組織の習慣、思い込みなどから自由であるべきという思想の現れである。

その根っ子は、クライアントとはコンサルティング仕事を発注してくれた特定個人ではなく、あくまでもそのクライアントの会社であるという基本思想に立脚している。そうした立場を貫徹することで外部のコンサルタントは、社内の改革とは違う立場で提言をすることができる。社内の暗黙の前提、見えない聖域にも挑戦できる。それが大きな価値として認められて、この業界が伸びてきたとも考えられる。

翻って考えれば、これは企業内部で働く人たちの働き方にも示唆を与えるのではないだろうか?かつては、組織のピラミッドがきれいに作られ、年功序列の色の強かった時代の日本企業は、組織に社員がぶら下がるという悪弊も生んだものの、幹部、中堅社員がのびのびと自社の将来について議論をする風潮を許すというメリットをもたらしていた面もあった。

成果主義は競争を促した反面、上司、組織の意向に敏感にならざるを得ない中堅社員を量産し、結果として健全な批判精神、自社の将来をあくまで社の利益という視点から考える習慣を弱めてしまったのかもしれない。逆に、これからのわが国企業の幹部に求められるのは、組織の都合や、組織の癖、病からフリーな立場で、全社の目で考え、行動し、困難を突破する能力なのかもしれない。外部のコンサルティングがなぜ流行るのか。その分析には、次の時代の経営幹部の役割、行動の仕方のヒントがあると思う次第である。「中堅社員よ、コンサルタントの目線で働け、活躍せよ」。

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