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ITmediaエグゼクティブ【経営者.jp企画提供】連載
ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術!
VOL.79 中野博さん  2011年07月21日

日本が蘇るために必要な「グリーン・オーシャン戦略」という選択

自然の恵みである限られた資源を感謝して使う。そしていかにして次世代に残すかも考えなくてはならない。


なぜ、いま「グリーン・オーシャン戦略」なのか?
 
本書では、社会貢献と環境保全や貧困問題の解決など多くのCSR活動を必須とした新しい経営戦略を「グリーン・オーシャン戦略」と呼んでいます。
 
もちろん、チャン・キムとモボルニュの「ブルー・オーシャン戦略」をヒントにしてのネーミングですが、発想は彼らの提唱した「ブルー・オーシャン戦略」の先にある経営戦略を明快にしたものです。
 
つまり、「グリーン・オーシャン戦略」とは「地球および自然」と「企業の成長と利益」と「人間の幸せ」のトリレンマをいかに解決するか? そして、「四方よし! 」(売り手、買い手、世間、地球)の経営こそがこれからの経営と説くものです。
 
「グリーン・オーシャン戦略」の根底に流れているのは「愛」と「奉仕の精神」であり、「恩送り」の気持ちなのです。
 
「恩送り」とは何でしょうか?
 
その前に、まず「恩返し」について考えてみましょう。例えば、「鶴の恩返し」は10歳くらいの子どもであれば、誰もが知っています。鶴の恩返しは一般に「恩を受けたら、その恩に報いることをしましょう」という教訓であったり、「何か良いことをすると必ず別の良いことが自分にかえってくるよ」という教訓を交えた話であると教えられています。
 
しかし実際は、動物を助ける優しさを持ちながらもたった1つの約束(「決してのぞいてはいけない」という約束)さえ守れない愚かさ、どんどん痩せこけていく娘(鶴)に気がつきながらも殿様に献上する着物を織らせ続けてしまった人間の愚かさ、鈍感さなど複雑な心理テーマを扱っているという説もあります。
 
つまり、地球のため、自然のため、動物のためという優しい気持ちはすべての人間にはあるはずですが、自然の恵みである資源には限りがあるので、感謝して使いながらも、先回りして対策を講じる必要がある、これを学び取ることができます。
 
もちろん、解釈は人それぞれあると思いますが、「恩返し」とは「恩を受けた相手」へ「返す」ことができるため、活動内容は明確です。例えば、あなたが親兄弟や友人から何か「恩を受け」たら、その友人に「返す」ことが「恩返し」です。
 
しかし、あなたが受けた恩を直接返すことができないことも多々あります。例えば、美しい緑まぶしい森。エメラルドグリーンの湖。コバルトブルーな海。スカイブルーで雲1つない晴れた空。ハイキングに行ったときに深呼吸して美味しかった森林でのおいしい空気、そこで見つけた湧水。こうした大自然の恵みをわたしたちは恩恵こそ受けることができますが、返すことはできません。
 
しかし、この美しい大自然の恵みを次の代へ美しいまま、おいしいまま残すことはできます。もちろん、努力が必要でしょうし、知恵と工夫がいる場合も多いでしょう。1人の力では無理でも多くの仲間、多くの企業やNPOなどの団体の力で協力し合えば、できないことはないかもしれないのです。こうしたことを本気で行うことこそが、「グリーン・オーシャン戦略」の神髄なのです。もし、あなたがすでに「親」であれば、このことは容易に理解できるでしょう。
 
なぜならば、親が子どもを育てる際には、何の見返りも考えていません。無償の愛を子どもにたっぷり注ぎ続けるのですから。まさに、わたしたちが先祖や親たちから受け続けてきた無償の愛を親に「恩返し」の形ではなく、気持ちの上で、「恩返し」する意味で、次の世代へ無償の愛を送ること。それが「恩送り」であり、「グリーン・オーシャン戦略」なのです。
 
「グリーン・オーシャン」戦略の根底には感謝と愛がある
 
グリーン・オーシャン戦略とは、次の3つのパートから定義されるが、すべての根底には、自然への感謝と「恩送り」の愛情が根底にあるものを言います。
 
1、自然の恵みに感謝して、「節約」または「代替」可能なものはできる限り早期に対策を講じて、限りある地球の資源を有効活用しながら、あるいは企業や個人の力で未来への恩送りとして、自然を守るだけではなく積極的に森を育てるなどの自然を育むことを実践し、自然と共存共栄していくことをミッションとする。
 
2、未来に起こりうる可能性をさまざまな角度であらかじめ予測し、最悪のシナリオまで想定したリスクを計算し、企業として個人としてできる範囲でこのリスクを削減する。この場合のリスクには単に因果関係が明らかに認められる場合だけではなく、人間および地球環境に悪影響を与える可能性がある場合には使用しないとする「疑わしくは製造しない、使用しない、売らない」という姿勢が重要である。
 
3、企業は使用している自然の恵みや地球の資源やエネルギーなどの活用につき堂々と包み隠さずに情報公開を行い、消費者とともに愛情をもって、持続可能なモノづくりやサービスを行う。この情報公開により多くのステークホルダーとともに、「人と地球に優しい」社会をつくることを企業活動および個人のライフスタイルの根幹とする。
 
グリーン・オーシャン戦略はこうした定義により、地球と共存共栄することが狙いです。
 
企業であれば、活動から得た利益を自然の保護や育成に寄付および投資を行い、その活動内容を公開します。この結果、企業はステークホルダーである消費者や地域の住民たちから受け入れられて、会社の評判が高まります。その評判により、グリーン・オーシャン戦略を実践している会社は持続的な成長が可能になるという経営戦略です。 
 
企業がグリーン・オーシャン戦略を実施し始めると、CSR活動こそが、多くのビジネスチャンスであることに気が付くでしょう。すでに賢くなってきた多くの消費者はグリーン・オーシャン戦略を遂行している企業や人々から買うだけではありません。賢い消費者は売り手である企業(提供者)たちとともに地球への感謝や次の時代を担うこどもたちへの愛情を共有しながら、新しい未来を創りだす魅力ある新技術や商品をともに創造するようになるからです。
 
いわゆる売り手(企業)と買い手(消費者)が世間と地球にとって、「これはいい!」と思える商品やサービスやビジネスモデルが今後の新しい経営戦略になるでしょう。しかも、いまやTwitter、 Facebook、 mixiなどのソーシャルメディアが普及して「口コミ」による評判がすぐに広まる時代には「共感」こそが経営の重要な資源になってきています。こうした時代背景を考えても、グリーン・オーシャン戦略が今後の企業経営には必要ではないでしょうか?なぜなら、感謝と愛情が根底にあるわけですから、まさに商人道です。
 
「グリーン・オーシャン戦略」は競合相手と戦うことをベースにしていません。この地球を、自然の恵みをいかに大切にするか?子どもたちへ「恩送り」することをベースにしての経営戦略であり、個人であればライフスタイル革命にあたるものなのです。なので戦うことを前提にした、レッドでもなく、ブルーでもないのです。
 
競合相手をも誘い込んでしまうほどの大きな経営思想、地球との共生を意味する「グリーン」なのです。今回の一連の大惨事により、こうした発想の転換が必要になると思います。
 
「グリーン・オーシャン」戦略の3つのカタチ
 
グリーン・オーシャン戦略は、すでに多くの会社が「社会貢献」「地球のため」「未来のこどもたちのため」など美しい心から実践してきた数々の内容を1つの言葉に集約しただけですので、新しい概念ではありません。しかし、言葉として初めて発表する以上、どんな概念や活動なのか、既存のものを紹介しないと分かりにくいと思いますので、ここに紹介します。その形は大きく3つあります。
 
1つ目が、CSR活動。
 
2010年11月に、SR(組織の社会的責任)の規格としてISO26000が発行され、CSR(企業の社会的責任)は再び注目度を増しています。もはや、どの企業も組織も、社会的責任をないがしろにしていては立ち行かない時代になっているのです。大企業を中心にこのCSR活動は盛んに行われているが、地味な活動であったり、ボランティア的なものが多かったために脚光を浴びてこなかっただけである。
 
2つ目が、「共感」経営。
 
これは企業の活動、商品やサービスを消費者が「共感」し、共感したものをソーシャルメディアなどで紹介していきます。これを最初から仕組んでいくことが、まさに共感経営なのです。消費者が本気で共感すれば、どんどん広がるのです。あのマーケティングの神様と言われてるフィリップ・コトラーが「マーケティング3.0」の中でこう言っています。
 
「マーケティング3.0を実行している企業は、より大きなミッションやビジョンや価値を持ち、世界に貢献することを目指している。社会の問題に対するソリューションを提供しようとしているのである。マーケティング3.0は、マーケティングのコンセプトを人間の志や価値や精神の領域に押し上げる。消費者を全人的存在ととらえ、消費者としての一面以外のニーズや願望もおろそかにされてはならないと考える。それゆえマーケティング3.0では、感情に訴えるマーケティングを、精神に訴えるマーケティングで補うのである。」
 
3つ目が「4方よし! 」の哲学。
 
ここでいう、4方とは、近江商人の思想である「3方よし」の中で言っている「売り手」「買い手」「世間」に「地球」が加わっての経営哲学です。
 

 
 
 
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